2005年3月24日(木)「しんぶん赤旗」
仏独反発、見直しへ
EU 労働条件悪化のサービス市場自由化
【ブリュッセル=浅田信幸】経済戦略見直しを議題とする欧州連合(EU)首脳会議は二十三日、EU域内での事業活動を自由化する「サービス市場の自由化」に関する「ボルケスタイン指令案」の抜本的見直しをはじめ、二〇一〇年までの戦略を練り直すことで合意し、閉幕しました。ボルケスタイン指令案に対しては、仏独などから労働条件の悪化を広げるとの強い懸念が表明されていました。
EU議長国ルクセンブルクのユンケル首相は二十二日、記者会見で、「欧州社会モデルを維持したいというわれわれの気がかりを考慮した修正が(指令案に)加えられる」と評価しました。
シラク仏大統領は二十三日、閉幕後の記者会見で、十九日にブリュッセルで欧州労連(ETUC)が中東欧諸国の労働者も含めてサービス自由化への反対を掲げて数万人のデモを行った事実を指摘。抜本的見直しが「事実上の撤回」になると評価しました。
サービス市場自由化は経済戦略の一つの柱と位置づけられていた課題。域内市場担当ボルケスタイン前欧州委員のイニシアチブで昨年提案されたもので、EU域内で事業を行う企業は進出先の国の法律でなく出身国の法律に従うとする「出身国主義」が原則です。
これに対し、仏、独、ベルギー、スウェーデン、デンマークなどは、労働者の流入だけでなく、中東欧諸国の低賃金と長時間労働を持ち込む「社会的ダンピング」が生じ労働者の権利保護や高福祉の制度を持つ「欧州社会モデル」が脅かされると強い懸念を表明。
特に二カ月後に欧州憲法批准の国民投票が実施されるフランスでは、同指令案が政治論議の中心問題に浮上。憲法を「超自由主義」と見る批判が勢いを増し、世論調査で批准反対が賛成を上回る事態になっていました。