2005年3月23日(水)「しんぶん赤旗」

主張

内部告発者保護

報復は不正の温存につながる


 企業や官庁の不正、違法行為を内部告発し、報復されても屈しない勇気あるたたかいが続いています。

 隠された不正を社会的に告発した人たちを保護することは、社会正義を実現し、国民の利益を守るために重要なことです。

不利益な扱いは違法

 警察の裏金づくりや雪印食品の牛肉偽装事件をはじめ、犯罪や違法行為の告発は、ゆがんだ企業経営や行政をただす上で、かけがえのない力を発揮しています。

 来年四月からは、内部告発者を保護する公益通報者保護法が施行予定です。告発を逆恨みして、解雇や不利益な扱いで報復することはもってのほかです。

 運輸業界内のヤミカルテルを告発し、不利益扱いをされてきたトナミ運輸の串岡弘昭さんに、富山地裁が外部への告発は「正当な行為であって法的保護に値する」と救済を命じる判決を出しました。

 串岡さんは、判決が謝罪を認めず、損害賠償も不十分であることを不服として控訴しましたが、三十年にわたり、報復に屈しないで正義を通す姿が反響をよんでいます。

 公益通報者保護法は、告発をできるだけ内部にとどめ、マスコミをはじめ外部への通報の要件を限定しています。といっても要件に該当しない通報も、一般法理が適用され、保護されるというのが法の趣旨です。

 企業や警察の対応を見ても、内部だけの告発では、自浄能力が働かないことは目に見えています。公益を守るための外部への告発を保護し、報復を許さないことは当然です。

 その一方、愛媛県警で裏金づくりに手を貸すことを拒否し、告発した仙波敏郎巡査部長が、あからさまな報復を受けていることは重大です。

 仙波さんは、告発の後突然、配置転換され、警察官の適格性を否定され、仕事は与えられず、給与も大幅減額となりました。著しい不利益扱いです。

 この人事は、現職警察官による告発が続くことを恐れた、見せしめそのものです。しかも、犯罪行為にふたをして、これを温存しようとするものであることは明りょうです。

 公益通報者保護法は公務員も対象です。それ以前に公務員は、犯罪があるとわかれば告発することを刑事訴訟法で義務づけられています。

 不当な免職や不利益扱いがされないよう身分保障がされています。

 昨年の法案審議のさいも、政府は「公益通報を理由として免職その他不利益な取り扱いがなされないよう公務員法制を適用しなければならない」(三月二十四日、参院法務委員会)と答弁しています。警察が告発者に報復するのは言語道断です。

 犯罪を取り締まるべき立場にありながら、この法の趣旨を公然と踏み破ることは、民間企業にも「法を無視してよい」と宣言しているのと同じです。告発を真摯(しんし)に受け止め、うみを出しきることが、国民の信頼回復のために不可欠です。

主社会には不可欠

 アメリカやイギリスでは内部告発者は「警笛を鳴らす人」とよばれ、保護する制度が確立しています。内部告発への報復は、こうした世界と日本の流れに逆らう暴挙です。

 企業や官庁が不正や犯罪を隠し続ければどうなるのか。国民の安全や健康を脅かし、税金のむだ遣いや腐敗、権力の乱用などを招きます。

 正当な内部告発は、民主主義社会の健全な発展にとって欠かせません。公益通報者を保護することは、企業や官庁の責務です。


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