2005年3月21日(月)「しんぶん赤旗」
主張
家計負担増
こんなやり方許せますか
小泉内閣が今後の二年間で国民にかけようとしている負担増は七兆円に上ります。
負担増のメニューはさまざまです。大多数の世帯にかかわる所得税・住民税の定率減税の半減・廃止。国立大学の授業料値上げ。年金課税の強化。介護保険の利用者負担増。新たに約二百万軒の中小零細業者と農家に消費税の納税義務を課す消費税の免税点引き下げ…。
その一部を見るだけで今回の負担増の無謀さが浮かび上がります。しかも、自民、公明、民主の三党は消費税増税を前提にした社会保障の見直し協議の開始で合意しました。
わが家の負担増は
「わが家の負担」がわかるよう、日本共産党のホームページは、世帯のタイプと収入別の試算を掲載しています。
例えば年金生活の高齢夫婦で、年金の月額が夫婦合わせて二十五万円、都内に在住する世帯の場合―。すでに実施された医療費値上げを含めて、年間の負担増は約二十三万円におよびます。もしも消費税が10%に増税されたら、それだけで年十万円の負担増です。
小泉内閣には、負担増が家計にどんな影響を与えるのか、真剣に考えた形跡さえありません。国会で共産党議員が試算を示すと、自民党席から「こんなに上がるのか」と驚きの声が上がるほどです。
庶民のくらしには無頓着な一方、政府は、大企業や大企業の役員クラスの負担には配慮を惜しみません。
谷垣財務相は言います。「法人税の引き下げはグローバル化のなかでやらなければならない」。「法人税率、所得税の最高税率の引き上げをやれば、日本は空洞化する」(衆院予算委、二月七日)
小泉首相ものべています。「所得の50%以上が(税金に)取られるのでは、働く意欲がなくなる」(参院予算委、三月四日)
あたかも、日本の税制が大企業や高額所得者に厳しいかのような発言ですが、現実はまったく反対です。
法人税率は何度も引き下げられて主要国で最低水準です。手厚い優遇措置を受ける日本の大企業の負担は、実際には、税率で比べる以上に軽くなっています。
GDPに対する法人所得課税の負担率で比較すると―。イギリス3・5%、フランス3・4%、イタリアは3・6%。日本は1・9%です。韓国3・1%、タイ2・9%、マレーシア6・6%と、アジアの中でも低い負担です。
首相の発言には大きなごまかしがあります。日本の所得税制は単純な累進課税ではなく、「超過」累進課税です。どんな高額所得者も、最高税率37%が適用されるのは千八百万円を超える部分の課税所得に対してだけです。所得の全体に最高税率がかけられるわけではありません。
高所得者に甘い税制
給与収入が三千万円の人の所得税の実効税率は、日本は20・3%にすぎません。ドイツ35・7%、イギリス34・9%、フランス32・9%、アメリカ23・8%と比べて最低です。
所得税は、配偶者特別控除の廃止などによって、ぐっと低い所得層にも課税されるようになっています。所得税の課税最低限は夫婦と子二人の四人世帯の場合、日本は三百二十五万円です。これに対してアメリカ三百四十七万円、フランス三百九十万円、ドイツ四百九十六万円です。
日本の税制は大企業にも高額所得者にも甘く、低所得者に厳しいのが実態です。もっぱら庶民に負担増を求める議論に道理はありません。