2005年3月19日(土)「しんぶん赤旗」

主張

牛肉とライス氏

BSE発生国がなぜ威張る


 アメリカのライス国務長官の来日で、牛肉が大きな問題になっています。日本は、アメリカでのBSE(牛海綿状脳症)発生を受けて輸入を停止しています。これにたいし、米政府は、米国産牛肉の輸入再開の時期を明示するよう迫っています。

 日本政府が「食の安全を重視して対応していく」(小泉首相)というなら、米政府の圧力に屈することがあってはなりません。

感染を防ぐ責任ある

 米紙ニューヨーク・タイムズの社説(十五日付)が、牛肉貿易を再開する「唯一の責任ある道」として、牛の検査をあげ、「必要なら全頭検査も行うべきだ」としているのは重要です。

 BSE感染牛は英国で一九八六年に確認されていらい、現在までに欧州各国を中心に二十四カ国で確認されています。これは、「二〇〇一年からEU(欧州連合)におけると畜場でのBSE検査が開始されたこと等で、新たにBSE感染牛が見いだされる国の数が増加」(食品安全委員会プリオン専門調査会)したためです。

 BSE検査を実施してこそBSE感染の世界的な広がりも明らかになり、研究や対策も進みました。

 米政府は「米国産牛は安全だ」といって輸入再開を迫っています。

 しかし、米国がBSE検査の対象としているのは全頭のわずか0・7%です。こんなずさんな検査では、安全だといわれても根拠もなく、信頼できません。

 BSE発生国は、感染の拡大を防止する責任があります。BSE発生国の、牛に関する貿易は禁止もしくはきびしく制限されています。輸入再開のための圧力を加える前に、信頼に足りる検査を実施して、BSE感染の実態を明らかにすべきです。

 日本では、二〇〇一年九月のBSE発生を受けて、翌月からと畜場での全頭検査が始まりました。EUの対象は三十カ月齢以上ですが、日本ではすべての牛です。その結果、二十一カ月齢、二十三カ月齢のBSE感染牛が確認されました。

 「三十カ月齢以下は検査からはずしてもよい」というEUの月齢線引きも、それまで若い牛にBSE感染牛が確認されていないという経験にもとづくものです。日本の全頭検査による若齢陽性牛の発見で新たな知見が加わり、それまでの「常識」は否定されました。

 日本の全頭検査を見直し、二十カ月以下はBSE検査から外すという動きも、科学的根拠に基づくものではありません。プリオン専門調査会が合意したのは「二十カ月齢以下のBSE感染牛は確認することができなかった」という事実のみです。ところが、それをねじまげて、厚生労働省と農林水産省が「BSE検査の対象を二十一カ月齢以上とする」と諮問しました。

 専門家の合意をねじまげるのは、科学とは縁もゆかりもありません。

消費者の信頼の確保

 米政府は、日本国内のBSE対策を検討しているプリオン専門調査会の論議にも「時間がかかりすぎる」と圧力をかけています。

 専門調査会では、審議の基本方針として、消費者の信頼確保をあげています。NHK世論調査では「安全性を重視するために専門家の議論がまとまるのを待つべきだ」とする人が84%を占めています。全頭検査を緩和して輸入再開する方向にも反対する人が圧倒的です。

 日本政府は、制裁をちらつかせて、強引に輸入再開を迫る米政府の圧力をはねかえすべきです。


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