2005年3月17日(木)「しんぶん赤旗」
海南島戦時性暴力訴訟
体と心の傷癒して
東京地裁 被害の女性が証言
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アジア太平洋戦争中、旧日本軍による性暴力を受けた女性たちが国を相手に提訴した海南島戦時性暴力被害事件訴訟の口頭弁論が十六日、東京地裁(瀧澤泉裁判長)でありました。原告と事件の調査をする歴史研究家の二人が中国から来日し、法廷で証言しました。
原告八人のうち六人が中国海南島の保亭(ほてい)県の出身です。歴史研究家の張応勇さん(65)は同県に十カ所の駐屯地があり、そのうち四カ所に「慰安所」があったことを証言。「管理は日本軍がしていた」とのべました。「女性たちに避妊薬を飲ませ、妊娠した場合は見せしめで首をはね、腹をさいて胎児をえぐり出していた」という事実を明らかにしました。
海南島は約三十七の民族が住んでいます。張さんは裁判官に訴えました。「日本の侵略戦争は民族の尊厳を傷つけ、個々の人権をじゅうりんした。尊厳を回復するために、日本政府は犯した罪の事実を直視し謝罪してほしい」
原告の林亜金さん(80)は一九四三年夏、十九歳のころ日本軍の駐屯地へ連行されました。一度は監禁所から出たものの、終戦間際の混乱のなかから逃げ延びるまで、のべ六回移動。毎日のように性暴力を受け、病気になり、顔や体に傷が残りました。
林さんは日本軍に両親と兄を殺されました。結婚しましたが、一年足らずで夫は「反革命分子」の汚名をきせられ、監獄で死亡。「家族も夫も不幸にしたのは自分のせいだ」と涙を流しました。「日本軍から逃れ、好きな人にめぐり会え、これで昔の傷も癒えると思ったができなかった。日本政府は侵略の事実を認め、体と心に受けた傷を癒やしてほしい」
法廷後、報告集会が開かれ、約百人が参加。林さんと張さんに、会場で作った手作りのビーズの首飾りと花束を贈呈しました。