2005年3月11日(金)「しんぶん赤旗」
最悪の人権侵害「人身売買」
防止・根絶へ対策強化を
禁止へ法改正案
日本共産党参院議員 井上 哲士さんに聞く
被害者保護しっかりと
加害者の野放し許されない
「人身売買」を禁止し、被害者を保護するための法改正案が今国会で審議されます。日本の実態や、改正案の内容などを日本共産党の井上哲士参議院議員(法務委員)に聞きました。
「人身売買」の受け入れ大国
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「人身売買」とは、売春強要や強制労働、臓器提供のため人を売買したり外国に送ったりすることです。被害者が同意しているか否かは問われません。世界では女性と子どもが深刻な被害を受けています。
現在とくに「人身売買」として日本で問題になっているのは、外国人女性が日本にいけば仕事があるといわれて、渡航費用等を名目にばく大な借金を負わされ、性風俗産業などで働かされていることです。形態はいろいろですが、一般的な出稼ぎとは違い、まったく自由がない状態で働かされています。日本は諸外国から「人身売買」の受け入れ大国と批判されています。
ILO(国際労働機関)駐日事務所は、人身取引(「人身売買」)は「現代によみがえった奴隷制度」だと厳しく批判。日本で外国人女性の人身取引がおこなわれていることに注目した調査をおこなっています。
こんな例があります。コロンビア人の女性(20)が日本のコンピューターショップで働かないかと誘われ来日。日本ではコロンビア人の仲買人と日本人の「夫」が空港に出迎えました。その「夫」はヤクザの一員で、航空券代として三百万円の借金があるから返すようにと売春を強要。彼女は病気を装い薬局にいくふりをして逃げコロンビア大使館に保護を求めました。
法務省入国管理局が昨年二月におこなった入管法(出入国管理及び難民認定法)の違反調査では、「人身売買」被害者の可能性が高い人が五十三人もいました。これは氷山の一角です。
犯罪と規定し加害者に罰則
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近年、各国では国際組織の犯罪対策の一環として、国・地域レベルで対策をすすめています。国連では「国際組織犯罪防止条約を補完する人身売買、特に女性と子どもの人身売買の防止・禁止・処罰に関する議定書」も二〇〇三年に発効し、日本政府は批准をせまられています。国連女性差別撤廃委員会も日本政府に対策強化を勧告しています。
日本政府は、昨年十二月に「人身取引対策行動計画」を発表しました。その柱は防止、撲滅、被害者保護の三本です。
行動計画にもとづいて、今国会で大きくは二つの法改正をしようとしています。一つは刑法改正です。いまは「人身売買」の加害者を刑事罰の対象としていませんが、これからは「人身売買」を犯罪と規定し罰することになります。業者や仲介業者など加害者側が野放しになっているのですから厳重な処罰は当然です。
もう一つは、入管法の改正です。「人身売買」被害者は多くの場合、不法滞在・不法就労で罰せられ退去強制処分になっています。被害者であるにもかかわらず犯罪者扱いされたうえ、五年間は日本に再入国できないなどの不利益を受けます。今度の改正はここを改め、被害者を保護の対象として明確にし、基本的に在留資格を認めます。合法的に日本に滞在できることになれば、生活保護などの社会福祉を受けることができるようになります。
また、IOM(国際移住機構)を通じて被害者の帰国支援事業も強化します。
被害者保護はまだ不十分
日本共産党は昨年六月に参院議員が連名で質問主意書を提出するなど、必要な法整備と対策を求めてきました。
今回の法改正案は一歩前進ですが、被害者保護は不十分です。シェルター(避難施設)の提供などは既存の制度の運用を強めるだけにとどまっています。法律で被害者は保護を受ける権利があることを明確にし、専門スタッフを配置するなど、もっと独自の本格的な対策が必要だと思います。
「人身売買」は最悪の人権侵害です。防止・根絶し、被害者を生まないよう対策強化を求めていきます。