2005年3月10日(木)「しんぶん赤旗」
後世に伝えよう
語り、演じて、歌う 学童疎開の現実
学童疎開の現実を後世に伝えようと九日、東京・墨田区の江戸東京博物館大ホールで「語り継ぐ学童疎開―家族と引き裂かれた子どもたち―」が開かれました。定員四百四十人のホールは満員になり、急きょ中継テレビが置かれたロビーでも約二百人以上が見入りました。
戦時下の動物園で処分された象の物語を、声優として活躍する堀絢子さんが一人芝居で熱演。疎開経験者の愛川欽也さんが「学童疎開時代への思い」と題して体験を語りました。
疎開経験者らでつくる「全国疎開学童連絡協議会」が主催。八日から同博物館で始まった同名の展示会の一環です。
堀さんの舞台は、戦時中に軍からの命令で飢え死にさせられた象を描いた絵本『そしてトンキーもしんだ』が題材。悩む飼育係や象などを一人で演じ分けました。えさをもらうため最後の力を絞って芸を見せようと身をよじる姿が大きな影になって舞台を覆うと、客席からはため息のような声が漏れました。
疎開経験者らでつくる合唱団が、空襲で亡くなった妹への思いを歌った鎮魂歌「妹」のほか、疎開先で児童が歌った歌を披露。最後に疎開経験者らの証言をまとめたドキュメンタリー映画を上映。疎開中に孤児になった児童の多くが親類宅を次々に移ったり、夜間学校に通うなど苦労を重ねたことなどが紹介されました。