2005年3月9日(水)「しんぶん赤旗」

伊紙「ウソ」「疑問」

記者銃撃は「事故」米側説明

真相究明求める国民


 イタリアの新聞マニフェストのズグレナ記者がイラク武装勢力から解放された直後に車が米軍に銃撃され、情報機関員が殺された事件で、米軍・政府当局が「事故」と固執していることに対し、イタリアのメディアは強く反発しています。

各紙「警告なし」

 各紙は共通して、事前警告を行ったとする米軍の言い分に関し、「警告はなく、いきなり射撃を受けた」とのズグレナ記者の言葉を大きく紹介。車が「高速で(検問所に)突進してきた」との米側主張についても「五十キロから六十キロ」「通常の速度」との証言を伝えています。

 レプブリカ紙は、殺された情報機関員カリパリ氏は、これまでにもバグダッドに派遣され、現地の事情を熟知し、車で移動する際のルールも十分に心得ていたこと、拉致被害者の救出というデリケートな任務だけに非常に慎重な行動をとっていたことをあげ、米側の主張は「うそ」だと言いきっています。

 コリエーレ・デラ・セラ紙は、当時バグダッド空港では、ズグレナ記者をローマに連れて帰る飛行機が待機しており、米軍将校と米中央情報局(CIA)関係者もおり、ともに伊情報機関の行動について情報を受けていたと主張。事故説に疑問を提起しています。

情報出さない米

 米軍側が真相究明に必要な情報を公開していないことも、米軍への疑問を拡大させています。銃撃された車を米軍がメディアに公開していないことはイタリアではまだ報じられていませんが、カリパリ氏が持っていた二台の携帯電話のうち一台を米軍が勝手に「回収」し、イタリア側に返していないらしいことも指摘されています(コリエーレ・デラ・セラ紙)。

 「米軍の意図的攻撃」説はズグレナ記者の恋人の男性などが語っているもの。これについては、ローマの検察が調査に乗り出しています。

 他方、ズグレナ記者を乗せた車両が一台だけで移動していたことについて、通常は二、三台で車列を組んで行動するはずなのに、なぜ一台だけだったのか、車が大使館のものだったのかさえ明らかにされていないと指摘する新聞もあります。

 いずれにせよ、とるべき措置はとった、あの状況のもとではやむをえなかったとして「事故」説に固執する米側の態度が、イタリアの国民を納得させるものでないことは明白です。真相究明を求める声は、党派を超えて国民の間に広がりつつあります。

 (パリ=浅田信幸)


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