2005年3月9日(水)「しんぶん赤旗」

国会の視点

食の安全か 米の都合か

BSE全頭検査 「世界の非常識」発言


 米国産牛の輸入再開を求めるアメリカの圧力が強まるもとで、日本のBSE(牛海綿状脳症)対策のかなめとなってきた全頭検査を「世界の非常識」とした島村宜伸農水相の答弁が波紋を広げています。問われているのは、日本の食の安全・安心にたいする政府の基本姿勢です。

 島村氏の「非常識」発言は、二月二十五日の衆院予算委分科会で公明党の赤羽一嘉議員への答弁で飛び出しました。

公明質問に

 赤羽氏は、危険部位の除去が安全の担保であり全頭検査を不要だとする米国側の主張は「きわめて科学的だ」とのべ、「アメリカ産牛肉だと情報公開すればいい。嫌だという人は食べなければいいし食べたい人は食べればいい」と、輸入再開を求める立場から質問しました。

 これに島村農水相は、「全頭検査は世界の常識ではなく、非常識の部類ですから、いつまでもこういう姿勢に閉じこもっていることが妥当だとは考えていません」という問題の答弁をしました。

 民主党はこの発言で、同相罷免を求め、島村氏は三日の参院予算委でやっと、「非常識という言葉が適当でないというならこだわらない」と“撤回”を表明しました。

 しかし七日の同委では「日本だけが全頭検査がいいと、何もかも全部検査した方が安全は確かだがそれが現実的かどうか」と改めて答弁。全頭検査を投げ捨て、輸入再開に道筋をつけたいとの本音は鮮明です。

痛苦の経験

 食肉処理場で解体されるすべての牛を対象にBSE検査を行う全頭検査が導入されたのは二〇〇一年十月。国内初の感染牛発見から一カ月余り後のことでした。

 当時、世界保健機関(WHO)が加盟国に、BSEの感染源となる肉骨粉を牛に与えないよう勧告した一九九六年以降も「日本は安全」とたかをくくって放置していた政府の責任が厳しく問われていました。日本の食品安全行政の信用が地に落ちた痛苦の経験をふまえて導入されたのが、世界一厳しいBSE対策といわれる全頭検査でした。

 日本政府は〇三年十二月、アメリカでBSE感染牛が発見されたのを受けて輸入を停止。輸入再開にあたっては、日本国内と同様の安全確認を求めてきました。

 これに対し、アメリカの不十分なBSE対策に合わせて、日本の安全基準を後退させ、輸入再開を求めているのが米政府です。アメリカの要求に従うことは、日本国民の食の安全を脅かすことにほかなりません。

不安強まる

 日本共産党の高橋千鶴子議員は二月十七日の衆院予算委で、BSE対策のずさんな実態を指摘した米政府の食品検査官労組の告発文書を紹介しました。米政府が月齢三十カ月以上の牛の特定危険部位(脳、脊髄(せきずい)など)を完全に除去するとの対策を打ち出した後も食肉処理場ではそれが守られず、危険部位が混じる恐れがあるというのです。

 七日の参院予算委では紙智子議員が「(結論を)来年まで持ち越せば日本側に誠意がないと思われる」という島村氏に対し、「米国の都合優先か、安全・安心のためにやるのか」と批判。全頭検査の堅持を求めました。

 二月には国内初の新型(変異型)ヤコブ病発症者が確認され、不安を広げました。世論調査でも全頭検査緩和への反対は強く、米国産牛の輸入を再開したら「食べたくない」と答える人が六割にのぼります。いま、日本の食の安全・安心を守る方針が揺らぐかどうかの瀬戸際です。(古荘智子)


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