2005年3月6日(日)「しんぶん赤旗」

平和的発展の道歩む

温首相報告 中国全人代が開幕

「穏健な財政政策」へ


 【北京=菊池敏也】中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)が五日、北京の人民大会堂で十日間の日程で始まりました。初日は、約二千九百人の代表が出席し、温家宝首相が政府活動報告を行いました。

 初日には国民経済・社会発展報告と財政報告が文書で提出されました。

 温家宝首相は、昨年一年間の活動を振り返り、食料やエネルギーの需給関係のひっ迫や固定資産投資の過熱など、新たな問題に対して「マクロ規制の強化」の政策を打ち出し、これによって経済運営の不安定要因が抑えられ、顕著な成果があがったと強調しました。

 国民の可処分所得も都市部で実質7・7%、農村部でも6・8%増加。「小康社会(ややゆとりのある社会)を全面的に建設する上で着実な一歩を踏み出した」とし、経済運営に自信をみせました。

 同時に温首相は、中国の経済、社会の発展で「長期的問題と根深い矛盾」が存在することを確認。雇用問題、第三次産業の発展の遅れ、エネルギー浪費などが「経済、社会の健全な発展を制約している」と警告を発しました。

 今年の活動に関し温首相は、「社会主義の調和のとれた社会」を構築する重要性を訴えました。具体的課題では、GDP伸び率を8%前後にし、都市部で九百万人の新規雇用を実現し、登録失業率を4・6%に抑えるなどの方針を掲げました。

 また、従来の「積極的な財政政策」から「穏健な財政政策」へと転換し、国債発行も前年比で三百億元減らし、八百億元(約一兆円)とすることを明らかにしました。投資過熱を抑えるマクロ規制を行う一方、消費需要の拡大に力を入れる方針を示しました。

 昨年の全人代会議で「重点中の重点」とされた農業、農村、農民の「三農問題」は、今回も最重点課題として位置づけられました。五年間で農業税を完全撤廃する当初目標は、二年間繰り上げられ、来年に実現することになりました。

 外交路線に関しては「中国の社会主義現代化建設の道は平和的発展の道を歩むことだ」と指摘。平和五原則を踏まえ、「世界の多極化、国際関係の民主化を推進する」と述べました。また「覇権主義と強権政治に反対」し、国連と安保理の権威と主導的役割を擁護、強化すると強調しました。

 「台湾独立」の阻止を目的とした反国家分裂法案について温首相は、同法案が「最大の誠意と努力を尽くして祖国の平和統一をかちとろうとする一貫した立場を十分に体現したものだ」と説明。「台湾独立」を絶対に許さない「全中国人民の共通の意思と断固たる決意を表明したものだ」とも強調しました。

 温首相は、「一つの中国」の原則を踏まえ、台湾海峡両岸の「平等な話し合いと交渉を回復させることに努める」と表明しました。温首相が「台湾同胞とともに祖国統一の大業の実現のためともに奮闘しよう」とのべると、会場から大きな拍手が起こりました。

 同法案の趣旨説明は八日に行われます。

 全人代 憲法の規定上、中国の最高権力機関である中国全国人民代表大会の略称。国会に相当し、議員に当たる代表(約三千人)の任期は五年。毎年三月に開催します。最近は立法手続きや党・政府に対する監督機能が強化され、重要性が増しています。



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