2005年3月1日(火)「しんぶん赤旗」
彼はバスのハンドルを握りながら倒れた
過労死 これを最後に
吉井議員が質問
遺影手に妻が傍聴
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「この不幸な事件が日本で最後となることを強く願っている」――。日本共産党の吉井英勝議員は二十八日の衆院予算委員会分科会で、一昨年十月に奈良市内で起きた奈良交通路線バス運転手の過労死問題を質問しました。
乗務中、ハンドルを握りながら倒れ急死した中井頴(さとし)さんの妻、千代子さんも傍聴し、一刻も早い夫の労災認定を求め、質疑を見守りました。
当時勤続二十二年の中井さん(57)は二〇〇三年十月三十一日、市内のバス停で乗客を降ろし終わった後に倒れ、病院に運ばれる途中死亡しました。死因は大動脈瘤(りゅう)破裂。以前から過労蓄積による体調不良を訴えていた中井さんは亡くなる当日の早朝点呼の時も、乗務中も勤務交替を求めていましたが、会社側から拒否されました。
頴さんが倒れた様子を千代子さんが知ったのは、亡くなった五日後、匿名の告発メールでです。奈良交通は普通の病死と説明していました。
国土交通省近畿運輸局は昨年三月、奈良交通に対し、長時間労働など道路運送法の運輸規則に違反したとして、行政処分を行っています。こうしたなか千代子さんは労災申請を決断、昨年五月に奈良労働基準監督署に申請しました。
質問で吉井議員は、中井さんが死亡した〇三年十月の勤務は十三時間超過が半数近くなど長時間労働が日常化し、そのうえ奈良交通では代替要員も用意していない実態を明らかにした上で、労働災害の早期認定、労働時間の短縮などを「取り組んでもらいたい」とただしました。
尾辻秀久厚生労働相は「事情をきいたうえで適切に対応したい。個々のことと再発防止にむけ考え、答えを出したい」とのべ、中井さんのケースとともに、過労死再発防止にむけ厚労省として対処していく考えを示しました。
「夫の同僚数人に電話をかけたら、『しんどい』という言葉ばかり返ってきます。目標は労災認定だけではありません」―勤務を続ける運転手を気遣う千代子さんは、このケースがバス運転手の超過勤務見直しに結びつけば、と期待しています。