2005年2月28日(月)「しんぶん赤旗」

イラン、パキスタン、インド結ぶ

「平和のパイプライン」外交

地域協力や友好に貢献

米のイラン敵視けん制


 イラン・インド・パキスタンの三国が、イランからパキスタン経由でインドまで通じるガス・パイプラインの建設をめざし活発な外交を展開しています。南西アジア地域の経済協力だけでなく、地域平和に貢献する「平和のパイプライン」として注目されています。(ニューデリー=小玉純一)

 パキスタンのアジズ首相は三日間のイラン訪問を終えた二十四日、三月十九日にも予定されるイランとパキスタンの石油相協議にインド石油相も招き、三国パイプラインの技術的協議に入ることを明らかにしました。

 三国間では今月半ばから政府会談が相次いで開かれました。印パ外相会談(十六日、イスラマバード)、イラン外相とインド首相、外相との会談(二十一日、ニューデリー)、パキスタン首相とイラン政府首脳との会談(二十二、二十三日、テヘラン)です。いずれも三国のパイプラインが議題にのぼり、その建設をめざし具体的協議に入ることで合意しています。

2500キロ超

 “パイプライン外交”が大きく注目されはじめたのは、インド政府が九日にパキスタンともこの問題で協議に入ることを正式に決めたことでした。総延長二千五百キロ以上といわれるこのパイプラインは、インドとイランとの間では十年越しの話です。しかしパキスタンとインドの関係では、双方の核兵器実験、一九九九年のカシミールでの軍事紛争、双方で百万人にのぼる軍の配置など極度の緊張を伴う対立が続いてきました。

 印パ両国にとってパイプライン計画は今後の経済成長にみあうエネルギー供給対策の一環ですが、パキスタンには年六億米ドルの通過料収益を得るという思惑もあります。それでも対立続きの印パ間ではパイプラインの話は進みませんでした。インドにしてみれば、エネルギーの供給元の一部を「敵国」に握られるようなものだったからです。しかし、この一年余の印パ緊張緩和、対話の継続で事態が変わってきました。

インドの懸念

 イラン国境に近いパキスタンのバルチスタン州には過激派の問題もあり、供給の確実性についてのインドの懸念は消えていません。それでも十六日の印パ外相会談は、安全供給というインド側の懸念を解決することを了解してパイプラインの検討にOKを出しました。インド紙は「グッドニュースだ」「パイプラインはもはや夢想ではない」と歓迎しています(タイムズ・オブ・インディア社説)。

 注目されるのは、パイプラインが経済的利害だけでなく地域平和の問題として位置付けられていることです。パキスタンのアジズ首相は二十二日、テヘランで記者団に「“パイプライン外交”は地域の状況を改善し平和に貢献するだろう」と述べました。他方、イランのハラジ外相はその前日、インドの首都ニューデリーで行われた経済界との会合で、パイプラインが「疑いなく地域の結束に積極的影響を与える」と述べ、記者団には「私は平和のパイプラインと呼ぶ」と強調しました。

 インドのナトワル・シン外相は一月に「地域協力と友好の新しい様相が始まる可能性」を示すと述べています。パキスタン紙ドーンは、「印パ間の信頼醸成に貢献する」とも評価しています(二十五日付)。

米圧力のもと

 この間の三国外交は、二期目のブッシュ米政権がイランに対し「核兵器開発阻止」を掲げ「体制変革」も示しその圧力をいよいよ強め始めたなかで行われました。

 イランは、インドが核兵器を保有し核不拡散条約(NPT)体制の外にあることを承知のうえでなお、原子力の平和利用という自国の公的立場への理解を求めたもようです。インドは「イランは国際原子力機関(IAEA)と緊密に作業を」とし、イランを批判しませんでした。パキスタンも「イランは自力対処できる国」との見方を示しただけでした。

 ブッシュ政権は、イランとパキスタンがパイプラインのような大規模プロジェクトを進めることを嫌っていると報じられています。パキスタンは米国の「対テロ戦争」同盟国であり、ブッシュ政権が今年も経済援助を決めたばかり。他方のイランは米国がいう「悪の枢軸」国。それでも、パキスタン・イラン会談は、パイプラインだけでなく広く経済的協力関係の強化も確認しました。

 イラン・パキスタンは同じイスラム教国でありながら、アフガニスタンのタリバンをめぐって対立し、双方の不信が強まった時期が最近までありました。その両国が米国との相反する関係を持ちながら、この数年に関係を改善しているのは新しい動きです。

 かつて米国のアフガニスタン空爆を支援したパキスタンのムシャラフ大統領は二十四日、英国のスカイ・ニュース・テレビで、「この地域にはイラクのような新しい戦争をする余裕はない」とのべ、軍事攻撃も視野に入れたイランに対する敵視政策を強める米国をけん制しました。



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