2005年2月24日(木)「しんぶん赤旗」 生活支援へ組替えて衆院予算委公聴会山家氏が負担増批判衆院予算委員会は二十三日、二〇〇五年度政府予算案について学者、有識者の意見を聴く公聴会を開き、八人の公述人が意見をのべました。 前神戸大学教授で、「暮らしと経済研究室」主宰の山家悠紀夫(やんべ・ゆきお)氏は、「国民への負担増が景気と財政にいっそうの悪化をもたらす」と政府の増税・負担増路線を批判。景気回復には消費の回復が必要であり、そのためにも予算を生活支援の方向に組み替えるべきだと主張しました。 山家氏は、国民に消費税増税など九兆円の負担増を押し付け経済を失速させた橋本内閣の失政にふれ、「失敗の轍(てつ)を踏んではならない」とのべました。 ニッセイ基礎研究所の武石恵美子氏は、少子化問題について、日本の子育てと仕事両立のための施策の遅れを指摘。少子化の流れを変えるためには、子育て世帯の家計の実態にも目を向けたきめ細かな政策が必要だと話しました。 日本共産党の佐々木憲昭衆院議員は、「家計をどう支援していくべきか」と質問。山家氏は、「企業があげた収益が労働者に還元され、家計に流れるようにすることが重要だ」と強調。サービス残業の根絶に向けた施策や、世界的にも低い水準にある法人の税負担を引き上げることなどが求められるとのべました。 公聴会での山家氏公述(要旨)二十三日の衆院予算委員会公聴会での、前神戸大学教授・暮らしと経済研究室主宰の山家悠紀夫氏の公述(要旨)は次のとおりです。 日本経済と景気の現状の特徴は、輸出の影響力が極めて大きくなっているということだ。輸出が増えると景気は良くなる。輸出が減ると景気は悪くなる。二〇〇一年は景気が落ち込んだ年で、生産も大幅にマイナス、米国の景気が失速した年。〇二年からの景気回復は、米国や中国の経済が好調だったことがある。日本経済は、米国や中国など海外の景気に左右され、危うい基盤の上にたっている。 国内需要、GDP(国内総生産)の55%を占める民間の消費支出の伸びが大事だ。消費の回復をはかることは景気の本格的回復をはかるため必要だ。GDPの実質消費支出も名目成長率も二〇〇四年度はマイナスを続けている。 雇用者報酬(所得)の前年比変化率をみると、〇一年から〇四年まで四年連続で減少。一九九七年から減少傾向にある。〇四年は二百六十三兆円で前年から三兆円の減、〇一年に比べ十兆円、九七年からみると十八兆円も減った。景気回復といわれているが、家庭部門では一向に回復しておらず悪化している。 〇五年度予算案にはどういうことが期待されるか。定率減税の縮小、住宅ローン減税の縮小、国立大授業料値上げなど、家計部門の負担が大きくなっている。こうした負担増は家計を圧迫し、景気悪化になることを懸念している。財政が極めて厳しいことは承知しているが、国民の負担増によってそこから脱却をはかり、結果として財政状況が悪くなったのは九七年の例がある。 九七年に財政がどのように悪化したか。国と地方自治体を合わせた政府正味資産は九〇年末に三百五十兆円あったものが〇二年末には百六兆円に減った。一九九八年の年間減少額は五十五兆円と極めて大きい。 九七年には増税など九兆円の規模の負担増で、結果は景気が悪くなり財政悪化を招いた。その失敗の轍(てつ)を踏んではいけない。 〇五年度予算は、消費支出を回復するため国民の負担を軽くし生活を支援するための組み替えが必要だ。 |