2005年2月20日(日)「しんぶん赤旗」 ライブドア ニッポン放送株買い占めメディアのあり方から考える“新興のインターネット関連企業のライブドア”対“民放のやり手・フジテレビ”。どちらがニッポン放送の株を多く取得するか。フジテレビが乗っ取られるのか。テレビや新聞の取り上げ方はもっぱら、この角度からのものです。マネーゲームの様相に乗っかっただけの見方でいいのでしょうか。 放送問題取材班
ライブドアがニッポン放送株の37・67%を取得し、筆頭株主になりました。投じた金額は五百億円とも八百億円ともいわれています。ライブドアのねらいは、ニッポン放送がフジテレビの大株主であることから、フジテレビへの経営関与にあります。 「ラジオを含めたメディアと協議してインターネット事業をやっていきたい」と、ライブドアの堀江貴文社長はインターネットと放送との複合展開を示唆。共同通信のインタビューには「経営哲学や信念は別にない。当たり前のことを当たり前にやっている。市場というフィールドで思い切り走っている」と答えています。 時間外取引の違法性指摘も
フジテレビが、ニッポン放送の完全子会社化を意図し、フジ・サンケイグループの強化を打ち出していた矢先のことです。フジテレビは、ライブドアに対抗してニッポン放送株を25%買い、ニッポン放送が持つフジへの議決権の消滅をねらっています。 時間外取引によるライブドアの大量買い付けにかかわって、その違法性を指摘する声も上がり、政府は証券取引法改定を検討するとしています。ライブドアに資金調達したのはアメリカの投資会社リーマン・ブラザーズ証券。外資が日本の放送へ触手をのばしているともされています。 堀江氏の言葉から見えてくるのは、自らの事業の拡大、金もうけだけです。海外の例をみても放送がマネーゲームの対象になったとき、言論・報道の自由は投げ捨てられます。放送は、国民の電波をどう使うかという民主主義にのっとった公共的事業です。 有名無実化した集中排除の原則メディアの世界でも金にあかせて放送局が支配されることがないように「マスメディア集中排除の原則」があります。総務省令はマスメディアが放送局の株を持つ場合、「同一地域の複数の放送局で10%以上、別な地域の放送局の場合で20%以上の株式を保有してはならない」と持ち株制限をしています。外資も20%に制限されています。 同一資本やグループが新聞や放送などのメディアを複数支配すれば、言論の独占を招き、民主主義を損なうからです。 しかし、実際は集中排除原則が有名無実になり、株の保有は野放し状態。昨年、読売新聞が日本テレビをはじめ、地方のテレビ二十四社、ラジオ十八社の株を保有、そのうちテレビ九社とラジオ三社で持ち株制限を超えていることが発覚しました。 総務省がいっせい調査したところ、五十五社が持ち株制限を超えて放送局に出資していることが明るみに出ました。多くが新聞社で、放送局が他局の株を持っている例もありました。フジテレビが10%を超えるニッポン放送株を所有しているのも、集中排除原則に照らして疑問のあるところです。 マネーゲームの道具でいいのかメディアの独占集中は、すでに新聞による民放支配、キー局によるネット系列局支配という形で巨大な規模でおこなわれています。読売新聞―日本テレビ、毎日新聞―TBSテレビ、産経新聞―フジテレビ、朝日新聞―テレビ朝日、日経新聞―テレビ東京のように、日本列島は少数の新聞・放送グループに覆われています。 集中排除原則が骨抜きになっているもとで、ライブドアがそれに付け込んでニッポン放送株を買い付けたのが今回の事態といえます。放送を巨額のマネーゲームの道具にしていいのかが根本から問われています。
公共性から外れている元立命館大学教授 松田浩さんの話ライブドアのねらいは、ニッポン放送株の取得を通じてフジテレビへの経営参加にあるようです。フジテレビの持っている放送機能を自分の商売に結びつけたいのです。 堀江社長は「ルールに沿ってやっている」といっていますが、堀江氏の発言からは放送を発展させる意図は、少なくとも読みとれません。 フジテレビの放送をどう評価するかという問題は別にして、ライブドアのやり方は放送事業のもつ公共的性格から大きく外れており、社会的に批判されてしかるべきではないでしょうか。 西武鉄道の株主虚偽記載事件をきっかけに、多くのマスコミ機関で「マスメディアの集中排除原則」に反する持ち株制限違反や虚偽記載が明るみに出て、総務省は形の上では厳しく対処するとしていますが、一方では規制緩和を打ち出しています。ライブドアは、その盲点をついてきたわけです。今回のような参入の仕方がありうることへの警告といえます。 放送局の株を所有することの意味を、放送の公共性や、視聴者の立場から、あらためてとらえ直してみることが必要でしょう。 (メディア論専攻) |