2005年2月17日(木)「しんぶん赤旗」

何示したライス米国務長官訪欧

和解ムードふりまくが…

イラク戦争重ねて正当化


 二十一日からのブッシュ大統領の訪欧の露払い役としてライス米国務長官は三―十日、就任後で初の外交として欧州・中東九カ国・地域を歴訪し、中東和平推進と米欧関係改善を演出しました。和解ムードをふりまいたライス外交の実態は?

同盟の新しい章

 米欧関係は「自由と民主主義」という共通の価値観に基づく「価値観の同盟」(八日のライス長官のパリ演説)だと強調し、イラク戦争をめぐる対立を捨てて「同盟の新しい章」を開く。特に戦略的に最重視する中東に関し、「中東民主化」の大看板のもと、パレスチナ・イスラエル和平の前進をうたう―これが今回のライス歴訪のテーマでした。

 イラク戦争で米国を厳しく批判した仏独両国も友好的に対応。パレスチナ・イスラエル間の対話再開の動きという「幸運なタイミング」(英紙ガーディアン電子版十一日付)にも恵まれました。

 とはいえ、言葉遣いが多少柔らかくなったものの、好戦的なブッシュ流対外路線の基本は何も変わっていません。

 イラク問題でライス氏は、「今は過去の不一致から目をそらす時だ」(パリ演説)と言っただけです。欧州諸国の批判の根源である国際法違反の対イラク先制攻撃戦争には何の反省もせず。イラク戦争をともにたたかった同盟諸国を米国は決して忘れないと述べ(英紙フィナンシャル・タイムズ十一日付に紹介された十日の欧州記者団との会見での発言)、戦争を正当化する立場を重ねて表明しました。

 ブッシュ大統領が名指しで非難したイランについてライス氏は、政権打倒の軍事攻撃は「今すぐの議題ではない」と繰り返しただけ。これは、北朝鮮に関してブッシュ氏が「侵略・攻撃計画はない」と明言しているのとは対照的な態度表明です。

 現にイランに関しては、昨年四月から米軍が無人偵察機を飛ばしている(米紙ワシントン・ポスト十三日付)、昨年夏から米特殊部隊が潜入している(米誌『ニューヨーカー』一月二十四―三十一日号)などの報道が相次いでいます。

 イラク戦争では米国と同盟したブレア英政権も、イラン核問題では仏独両国と話し合い解決に努力しています。しかしライス氏は、これへの参加は表明せず、イラン問題は制裁措置がとれる国連「安保理に付託されるべきだ」(九日の米FOXテレビ・インタビュー)と繰り返しました。

 国連についても「重要な機関」と言うだけ。「ますます」重要になっているのが「問題別の諸国連合」(パリ演説)だとして、イラク戦争型の「有志連合」路線の効用を強調しました。

外交哲学変化なし

 ライス氏の外交哲学に何の変化もないことは、「自由にとって有利な勢力均衡(力関係)」の形成という、ブッシュ政権一期目からの同氏のお気に入りの命題が繰り返されたことに端的に示されています。

 ライス氏はパリ演説で、「今日われわれは、自由にとって有利な地球規模の勢力均衡を形成する歴史的好機を有している」と強調。対ソ「冷戦」対決路線が形成された一九四六―四九年を引き合いに出し、今は、当時と同じく、「専制政治」に対して「自由陣営」の結束を固める時期だと訴えました。

 当時の西側の決断が半世紀後にソ連の崩壊を導いた、だからいま「自由陣営」が米国の旗の下に結束すれば、イランやシリアなど、自由陣営に敵対する政権も打倒できる、というのです。

 そこにあるのは、もともとソ連の軍事問題の専門家として出発したライス氏の、古色蒼然(そうぜん)とした「冷戦」対決型、白黒二分論の世界観です。

 二十一世紀の世界秩序は国連を中心とした多極世界となるとの見方が欧州諸国では強まっています。ライス氏を外交的に歓迎したこれら諸国が、ライス氏の古い世界秩序論までを歓迎したようにはみえません。 坂口明記者



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