2005年2月17日(木)「しんぶん赤旗」 なぜ波及しない? 家計は“厳冬”トヨタなど大もうけなのに04年10〜12月期GDPマイナス二〇〇四年十―十二月期。トヨタ自動車など一部大企業の決算は、史上空前の大もうけを記録しています。ところが、十六日発表された同期の国内総生産(GDP)統計をみると、マイナス成長です。特に家計は冷え込んでいます。いったいどういうことでしょうか。 渡辺健記者 個人消費マイナス
GDP統計によると、個人消費はマイナスとなりました。実感に近い名目で三期連続です。大企業の好調さが「家計に及びつつある」(竹中平蔵経済財政担当相)などと、とてもいえる状況ではありません。家計に波及しないのは、大企業のもうけ方自身に原因があります。 たとえば、年間で一兆二千億円の純利益をあげる見通しとなったトヨタ自動車。十―十二月期の決算をみると、円高による為替差損分などを、「原価改善の努力」でカバーしています。その額四百億円。部品の調達コストや人件費をいかに抑えているかが、わかります。 大企業が「リストラ効果」で収益をあげるという構図は、依然としてかわっていません。下請け単価たたき、賃金抑制、正社員を減らしパート、派遣・請負労働者を増やす…。 GDP統計でも、国民の所得(雇用者報酬)は、四年連続で減り続けています。所得が減れば、個人消費が冷え込むのは当然です。そこに、税や社会保障の負担増が加わればなおさらです。 総務省の家計調査によると、十―十二月期平均の勤労者世帯の消費支出は前期比(季節調整値)で実質2・5%減、前年同期比で実質1.7%減となりました。ボーナス(年末一時金)が減り、実収入が落ち込んだうえ、健康保険と厚生年金の保険料(厚生年金保険料は十月から引き上げ)をボーナスからも月給と同率で徴収されるため、自由に使えるお金が減ったからです。 「外需頼み」も失速リストラとともに、小泉内閣流「景気回復」で頼みにしてきたのは、「外需依存」でした。ところが、輸出の伸びが鈍化し、GDP成長への寄与度が落ち込みました。 円高・ドル安傾向で、輸出にとって不利な状況になったこと、米国経済や中国経済に不透明感が漂いはじめたことなどが要因です。「外需頼み」の危うさは鮮明です。 円高や国内消費低迷のもとでの大企業の経営戦略にも、企業収益が家計に波及しない要因があります。 中国などアジアに生産拠点を移し、米国などに輸出して収益をあげる。米国や南米で生産し、米国で売る―。多国籍企業化した大企業は、どこで生産しどこで販売しても利益が上がればいいと、国内生産・販売にこだわりません。 たとえば、日産自動車の十―十二月期決算をみると、国内販売や国内の営業利益は頭打ちです。一方、営業利益の43%を北米で稼ぎ出しています。 必要なのは家計の応援/大増税は逆行リストラや海外生産に頼って高収益をあげようとする大企業をいくら応援しても、家計も日本経済も元気になりません。日本の景気を回復軌道に乗せるには、GDPの約六割を占める個人消費を直接応援することです。 どうすれば、いいのでしょうか。日銀の「生活意識に関する意識調査」(昨年十二月調査)に答えが出ています。 支出を増やす条件(複数回答)の上位は、「国民負担の将来像を明確化する」(41.0%)、「雇用や収入の不安の解消」(40.4%)、「所得税減税」(36.2%)、「老後の不安の解消」(34.7%)、「消費税率の引き下げ」(33.9%)。 小泉内閣がやろうとしているのはその逆です。 所得税や個人住民税の定率減税を廃止(増税)し、消費税率の引き上げをたくらみ、社会保障改悪を相次ぎ計画し、国民負担をどこまでも膨らませようとしています。 また、企業リストラを応援し、人件費の抑制を当然視しています。 これでは、老後と雇用・収入の不安は解消するどころか、増幅するばかりです。 |