2005年2月13日(日)「しんぶん赤旗」 横須賀への原子力空母配備計画米議会報告書 「日本の反核感情 根強い」米海軍制服組トップのクラーク作戦部長が十日、米議会で明らかにした横須賀(神奈川県)への原子力空母配備計画――。米側が同計画を実現するうえで最も懸念しているのが“日本の反核感情”であることが、米議会調査局の報告書で明らかになりました。
報告書は『海軍航空母艦 ジョン・F・ケネディの退役提案――議会の論点と選択肢』と題するもの。一月十四日付で公表されました。 米政府・国防総省は今月七日に発表した二〇〇六会計年度(〇五年十月―〇六年九月)の国防予算案で、空母一隻を退役させ、現在の空母十二隻体制を十一隻体制にする計画を盛り込みました。膨れ上がる国防予算の圧縮策とされます。退役するのは、通常型空母ジョン・F・ケネディと報じられてきました。 報告書は、同計画が昨年末から今年一月初めに米国内でいっせいに報じられたのを受けて作成されました。今後、同計画を審議することになる米議会のために、想定される論点や取り得る選択肢を提示しています。 とりわけ目を引くのは、横須賀への原子力空母配備問題に触れて、繰り返し「日本の反核感情」に言及していることです。 “政治的に非常に困難”
報告書はまず、ケネディ退役・空母十一隻体制への移行計画の背景を説明し、空母の母港の現状に触れています。現在、通常型空母キティホークが母港にしている横須賀については、次のように指摘しています。 「第二次世界大戦での米国による二発の原子爆弾の使用にさかのぼる日本での根強い反核感情のため、日本を原子力空母の母港にするという海軍の提案は、潜在的にはかなり大きな世論の反対に直面することになるだろうとみられている」 その上で報告書は、今回の計画の是非をめぐる論点や代替案を提示。〇六米会計年度にケネディではなく、キティホークを退役させ、代わりに原子力空母をただちに横須賀に配備する選択肢も示しています。 同案についても報告書は、横須賀を原子力空母用の母港にするには時間と費用がかかり、「日本の反核感情を仮定すれば政治的には非常に困難かもしれない」という論点を提示。「この選択肢は日本政府とのより広範な協議が必要になるだろう(おそらく日本の地方当局や民間グループも同様だ)」とし、「結局、日本の反核感情のために日本政府は政治的に受け入れられないとみなされるだろう」と述べています。 日本政府は現実には、原子力空母の横須賀配備について「(米側から)申し入れがあれば適切に対処する」と容認する姿勢を示唆しています。 しかし、報告書の指摘は、米側が、原子力空母配備に反対する世論と運動が日本政府の態度に決定的な影響を与えるものとして、行方を注視していることを示しています。 “世界規模展開に必要”報告書でもう一つ特徴的なのは、米空母の唯一の海外母港として横須賀の戦略的重要性を強調していることです。 報告書は「日本に空母の前進母港を置いていることは、西太平洋、インド洋への日常的な空母の展開を維持するのに必要な空母の総数をかなり少なくしている」と指摘。日本で空母の母港を失えば「海軍が西太平洋、インド洋/ペルシャ湾における空母の前方展開を維持するのはよりいっそう困難になる」という論点を紹介しています。 日本国内に強い反対があるのを知っているにもかかわらず、クラーク作戦部長がキティホーク退役後、横須賀に原子力空母を配備する意向を示したのも、このためです。 報告書はさらに、空母の役割について「作戦的にも象徴的にも最も重要な艦船」で「海外の航空基地へのアクセス(接近手段)がないか、制限されている状況下で特に有用だとみなされている」と指摘。(1)アフガニスタン戦争(二〇〇一―〇二年)やイラク戦争(〇三年)などで対地攻撃作戦を担ってきたこと(2)ハイチ侵攻(一九九四年)やアフガン戦争で陸軍部隊や特殊部隊の洋上基地として使用されたこと――を紹介しています。 先制攻撃のための米海軍の最重要戦力という位置付けです。実際、横須賀を母港とするキティホークも、アフガン戦争、イラク戦争に参加しています。 横須賀が米空母の母港である限り、米側が早晩、原子力空母の配備を具体的に迫ってくるのは避けられません。米国の先制攻撃のための前進拠点になっている横須賀の空母母港化を続けさせるかどうかが問われています。 (注)米海軍のクラーク作戦部長が米上院軍事委員会公聴会(十日)で認めた空母計画の要点 ▽米海軍が保有する二隻の通常型空母のうちジョン・F・ケネディを年内にも退役させ、現在の空母十二隻体制を十一隻体制にする。 ▽横須賀を母港にしている残り一隻の通常型空母キティホークは二〇〇八年または〇九年に退役させる。その際、十一隻の空母すべてが原子力空母になる。 ▽キティホークの後継艦として原子力空母を配備するため、日本側との協議が必要になる。 原子力空母 原発1基分二基の原子炉が燃やす核燃料を動力として航行する空母。熱出力は、日本国内で稼働している原発の原子炉一基分(約百万キロワット)に匹敵します。 原子力空母が横須賀寄港中に事故を起こした場合、半径数十キロで放射能汚染の危険があると見られています。 通常型空母のように燃料を貯蔵する必要がないため、艦載機のための燃料搭載量が二倍以上に増え、艦載機が使用する兵器の貯蔵スペースも増大します。 米海軍の空母
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