2005年2月13日(日)「しんぶん赤旗」

マスコミの政治報道

権力への砲列でなく祝砲?


 ○…十二日の民放番組に小泉純一郎首相が登場しました。番組で北朝鮮問題は話題にはなりましたが、小泉首相が“改革の本丸”として最重要課題に位置付けているにもかかわらず政府の調査でも八番目と国民の関心度が低い郵政民営化に多くの時間が割かれました。国民の政治上の関心事にマスコミが正面からこたえようとしないばかりか、政治権力におもねるかのような状況は深刻です。

 〇…一月十九日に日本記者クラブで小泉首相が記者会見しました。同クラブは米ワシントンのナショナル・プレスクラブをモデルに、日本の新聞・放送各社百四十七社、一線のジャーナリストら約千六百六十人で構成しています。

 小泉首相の同クラブでの会見は就任以来二度目。四十五分間の会見が終わってみれば憲法「改正」問題もイラク派兵問題も国民負担増路線も記者側から質問が発せられませんでした。

 『日本記者クラブ会報』(二月十日発行)で朝日新聞編集委員の早野透記者が感想をつづっています。「北朝鮮の拉致問題、イラク、憲法改正。身をよじるような問題があるのに何とものどかである。小泉首相が『日本記者クラブ、くみしやすし』とほほえんで帰っていったとしたら悔しいではないか」

 〇…民主党の中堅・若手議員の「人の和の会」(会長・山岡賢次衆院議員)は一日の発会会合にゲストとして渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長を招きました。渡辺会長は一時間五十分におよぶ講演のなかで「小泉は自民党を壊して民主党との(保守)大連立をやる気だ。民主党は自民党の分裂を誘って保守連立政権を狙え」と“保守再合同”をそそのかし、「民主党には迫力ある憲法改正論の哲学を持ってもらいたい」と注文。郵政民営化問題では「政策しだいで読売(新聞)は民主党(支持)に乗りますよ」と語っています。

 新聞という“公器”を政治権力争いにもてあそぶことを恥じない大新聞トップのジャーナリズム精神の退廃ぶりがあらわです。

 〇…七回のピュリツァー賞に輝いた米紙ニューヨーク・タイムズのジェーム・レストン記者は“権力に対する砲列たれ”とジャーナリズムの使命を語ったものでした。ジャーナリズムが権力に祝砲をあげ、政治権力への批判力を失いつつあるのだとしたら健全な民主主義は機能しません。最近のNHK番組改変をめぐる政治介入問題も深くかかわる問題です。

 (上)



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