2005年2月12日(土)「しんぶん赤旗」

国会提出の「障害者自立支援法案」

医療費5%負担→原則1割なんて

“治療が続けられない”


 「心の病を抱えている者に、経済的負担の増加は恐怖と不安をあおり病状を悪化させるばかり」―。国会に提出された「障害者自立支援法案」に、精神障害者らから不安と怒りの声があがっています。


 同法案では精神障害者やてんかん患者の通院医療費公費負担制度(精神保健福祉法三二条)を廃止し、これまで5%だった医療費を原則一割にしようとしています。

 全国精神障害者団体連合会事務局の黒川常冶さん(35)は、「治療の継続が必要なうえに、仕事を継続できるかどうか不安定な私たちにとって、医療費の問題は深刻です」といいます。

 非課税世帯の黒川さんの場合、東京都の施策によって5%の自己負担分も都が負担し、精神疾患の治療にかかる医療費は無料です。

「自治体の施策も後退」

 「今後原則一割負担となることで、自治体の施策も後退するのでは」と黒川さんは心配します。

 同連合会では「制度に大幅な制限を加えることは治療を受ける権利の侵害」と、制度存続を求める署名を始めています。

 5%を、倍の負担にする計画。しかも世帯の所得が、所得税三十万円以上(年収約六百七十万円以上)の場合は対象からはずし、医療保険三割の全額負担となります。実に六倍です。

 所得税非課税の低所得者や、「重度かつ継続して医療費負担の発生する人」(統合失調症、そううつ病、難治性てんかんなど)には、上限額や経過措置を設けるとしています。そのため負担が減る場合もありますが、全体は負担増です。

表

 福岡県で共同作業所などを営む社会福祉法人さざなみ福祉会の理事長、下川悦治さん(60)=日本てんかん協会副会長=も批判します。

 「てんかん患者は専門医が少ないため、他県の病院にかかっている人もおり、交通費もかかります。今回の法案では作業所などの通所施設の利用負担ももりこまれ、うちの作業所ではこれまで無料だった利用者が何万円も支払わなければならない。あわせれば大きな負担です」

 日本てんかん協会の会員調査では制度を利用している人の53・4%は親や家族の援助で暮らしており、本人の収入で暮らす人はわずか21・6%。

 てんかん患者や精神障害者は障害年金を受給している人が少なく、就労や自立の援助方策の遅れから親族に頼らざるをえないのが実状です。

 同協会では、制度の拡充・存続とともに、負担額を家族の収入を基準にするのではなく、本人の収入を基準にすることなどを求めています。

治療の中断で病状悪化も

 「負担増は、治療の中断、手控えから病状悪化や、命にもかかわることになりかねない。精神障害者の医療費負担を、国が親や同居の親族に支払わせる理不尽を許してはならない」というのは東京・渋谷区の代々木病院精神科・岩田俊医師。

 岩田医師によれば、通院公費負担制度は、入院中心の遅れた日本の精神医療のなかで、せめて外来医療の本人負担を減らすことで、病状の悪化や再入院、自殺を防ぐ役割を果たしてきたといいます。

 制度の改悪は「入院医療から地域生活中心へ」という国が掲げる目標にも逆行する―。民医連(全日本民主医療機関連合会)も制度存続を求める署名を広げます。



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