2005年2月7日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

指定管理者制度

住民サービスや公的責任後退…

是正の努力こうして


 二〇〇三年から始まった「指定管理者制度」の導入で、これまで公共的団体に委託してきた公の施設の管理・運営の見直しが迫られています。日本共産党横浜市議団と大阪・吹田市労働組合連合会の取り組みを紹介します。


福祉施設は非営利団体に 条例・規則つくり限定
「事業報告の義務化」は必要

横浜

 中田宏横浜市長は、「民の力が存分に発揮される社会を実現する」として、「民間でできることは民間にまかせる」と言いきり、委託施設はいうに及ばず、公園など既設の直営施設や、新港湾病院までも指定管理者制度に基づいて「公の施設」の民営化を推し進めています。

 一昨年の九月から、地区センター、地域ケアプラザ、区民文化センターなどの新規開設施設に次々と指定管理者制度を導入し、二〇〇四年十二月までに、関係条例を改正し、既設も含めて三十カ所の指定管理者を議会の議決を得て、決めています。

 一番の問題は、「住民の福祉の増進を目的として、その用に供する」と定義されている「公の施設」における市民サービスの維持・向上がどうなるかです。その点で最も危ぐされるのは、営利会社の参入です。ビジネスチャンス到来とばかりに、次々と公募に応じています。すでに、神奈川区にある「白幡地区センター」は株式会社が指定管理者となっています。

 日本共産党横浜市議団(大貫憲夫団長)は、利益追求が優先され、公平、公正な運営が担保されない、利用者、市民の声が後回しにされる危険があると指摘し、営利会社の参入に道を開いた地区センター、区民文化センター、市民ギャラリーの各条例などに反対しました。政策医療や高度医療の後退を招きかねない新港湾病院への指定管理者制度導入(民営化)にも反対しました。今後、市民サービスを後退させないための取り組みが大切と考えています。

 一方、地域ケアプラザ、福祉保健活動拠点、保護施設、老人福祉施設などの福祉施設については条例・規則で指定管理者を社会福祉法人などに限定しています。非営利の民間団体の福祉施設などが利用者の立場に立った運営を行ってきた歴史と実績を認め、踏まえたものであり、賛成しました。

 中田宏市長は、公園に設置されている野球場、テニスコートなどの有料施設に「利用料金制」を指定管理者制度と合わせて導入しました。指定管理者の自主事業が優先されて、一般利用者が締め出されることや、利用料の値上げが心配されています。新日本スポーツ連盟神奈川県連は、市に対し、住民の利用権を契約約款に明記すること、施設利用料金を値上げしないよう指導を強化することを要求しています。

 指定管理者の事業執行の管理は市長が行うだけで、議会への報告は制度化されていません。

 住民と議会がチェック機能を果たすには、直接事業者から事業執行状況を聴取したり、事業実施状況についての決算資料を求めることなどが必要です。市議会のなかで、この検討が超党派で行われており、実現が望まれます。

 党議員団は、問題点の指摘にとどめることなく、具体的な対案を提示し、利用者・住民自らの運動に資するよう努力しています。

 日本共産党横浜市議団 足立信昭事務局長


利用者の願い最優先
“宝”といわれる施設へ交流

大阪・吹田

 大阪府吹田市には、市民会館、文化会館、デイサービスセンター、老人保健施設などの外郭団体などに、管理運営を委託している三十三施設と、保育所、図書館、体育館など直営で運営されている二百七十六施設があり、合計三百を超える「公の施設」があります。

 吹田市は、これらの公の施設に対する指定管理者制度の適用について、いま条例改正に向けた検討をすすめており、「指定管理者制度についての運用指針」などをつくりました。これは、外郭団体が管理運営を行っている施設については、来年度に外郭団体の経営見直しを行うこと、そのうえで、当面は、いま管理運営を受託している外郭団体に管理者指定を行うことにしたものです。また、直営施設についての検討も来年度に行うこととしています。いよいよ、指定管理者制度をめぐって、正念場の状況を迎えています。

 昨年三月に、吹田市労働組合連合会など、公の施設で働く職員で構成される四つの労働組合が呼びかけて、さまざまな施設に働く職員が集い、指定管理者制度に対する「学習交流会」を発足させました。

 四月に第一回学習交流会を開催し、六十三人の施設関係者が参加。その後、指定管理者制度に対する運動づくりの討論を行い、(1)各施設の役割をまとめる(2)シンポジウムを行う(3)市民ニーズを把握する取り組みをすすめる―という三つの運動を提起。九月以後の学習交流会でこれらの取り組みをすすめてきました。

 体育館や勤労者会館などの施設ではアンケート、保育所などではヒアリング(聞き取り)活動に取り組みました。体育館のアンケートの回答では、専門の体育指導員が行う高齢者スポーツや親子体操などの教室を利用したことで「医者も驚くほど健康になった」「親子教室でリフレッシュ」「安心して気軽に利用できる教室をこれからも」などの期待の声が寄せられました。

 昨年十一月には「指定管理者制度と公の施設の役割」をテーマに市民シンポジウムを開き、四十人の市民や施設職員らが参加しました。シンポでは、勤労者会館、老人保健施設、デイサービスセンター、体育館の職員がパネリストになり、市民のくらしや活動を支える施設の役割について討論。「住民との討論をもっとすすめて、住民から見て“宝”といわれる施設づくりを」と話し合いました。

 施設関係者が集まる学習交流会は、その後も毎月続いています。今後は、各施設の事業をどう改善するのか、より使いやすい施設に向けた見直し提案も含め討論していきたいと考えています。「市民がより使いやすく、市民のくらしや活動を支える施設づくり」に向けて、職場での討論と利用者・市民との共同を広げて正念場を迎えた運動をすすめていきます。

 吹田市労連 有田八郎副委員長


 指定管理者制度とは 地方自治体の施設管理を、従来は地方自治体の出資法人等に限っていたのを民間団体、NPO、企業にも委託できるようにしたもの。行政コスト縮減などが目的。「官から民へ」のかけごえのもと、地方自治体の業務・施設を民間に開放してビジネスチャンスをふやす財界・政府のねらいもうかがえます。公共的団体に委託しているすべての公の施設が、2003年の法施行(地方自治法の一部改正)から3年以内(06年9月1日が期限)に直営に戻すか、「指定管理者制度」に移行を迫られています。



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