2005年2月7日(月)「しんぶん赤旗」 公安警察 ここまでやるか“共産党のビラまき”発見 尾行10カ月多額の税金使い違法捜査休日に自宅周辺で「しんぶん赤旗」号外などのビラを配っただけで「国家公務員法違反」(政治活動の制限)として逮捕・起訴された社会保険庁職員、堀越明男さん(51)。その事件の公判で公安警察の異常な実態が浮かんできました。 国公法弾圧公判に見るこの事件は、警視庁公安部が昨年三月、堀越さんを逮捕、東京地検が起訴したもの。堀越さんは休日に、職場と関係のない、自宅周辺でビラ配布していただけです。そんな事例で過去に逮捕・起訴されたことはありません。 第六回までの公判で警視庁公安部公安総務課の寺田守孝警部と、当時、月島署警備課長代理だった牛濱定警部(現警視庁公安部)の証人尋問がおこなわれました。 公判に提出された公安警察の「行動確認(本紙注=尾行のこと)実施結果一覧表」は、公安が堀越さんのプライベートな行動まで細かく観察し、記録していたことをはっきり示しています。例えばこんな記載が――。
これらは「国公法違反」という「容疑」にさえ関係のない「捜査」です。 ■市民も盗撮公安警察は尾行の際、ビデオ撮影していました。尾行態勢は、平日は二人ほどで、土曜・日曜・祝日は六人から十一人。車はワゴンタイプを使い、複数のビデオカメラをまわしていました。例えば二〇〇三年十月十九日には、車三台と徒歩組の計九人が、五台のビデオカメラを使って堀越さんを追っています。 公判では、そのビデオ映像も公開されました。 画面は周囲が暗く、隠し撮りのためカメラレンズに丸くくりぬいた紙などを張っているとわかります。カメラは一定距離を保ち、車道をはさんだ歩道などから堀越さんを映しています。 ほかの公安警察官の姿も時々カメラの視界に入ります。黒いバッグを肩にかけ、わきをしめて腰で固定しています。 カメラには地域に生活する市民の姿も飛び込んできます。顔まではっきり写っています。無関係の市民もこっそり撮影されているのです。 尾行は公判で明かしただけでも、約十カ月間、計約四十日に及びました。 捜査は、はじめから“共産党ねらい”でした。 発端は、〇三年四月十九日、土曜日の午前九時三十分すぎ。月島署警備課公安係の二人組が、東京・中央区月島のマンションで集合ポストにビラを配布する男性を「偶然」見かけたことでした。公安係はビラに「日本共産党」の文字があるのを見ると、すぐ尾行しはじめました。牛濱警部の指示で尾行が続き九時間以上も張り込みしています。 ■説明破たん「いっせい地方選告示日の前日で、投票依頼など、公職選挙法の文書違反の疑いをもった」と公安警察は尾行の「理由」を説明しています。ところが、牛濱警部にたいする弁護人の尋問でこの説明は破たんします。 ――(この日に)政党が政治活動としてビラをまくのは自由ですよね。 「はい」 ――何か違法があったのか。 「投票依頼とか、そういう脱法文書の可能性もあると感じた」 ――あなたがたは可能性で人を尾行するのか。 ――(選挙違反で)何事かあったら月島署取締本部の専従者に報告するか。 「当然です」 ――部下が違法と思われるビラの配布を発見し、(取締本部責任者の)刑事課長に報告したか。 「していない」 ――警視庁に質問し、回答をえなければ、捜査を開始しないのでは。 「公選法としてはそうだ」 ――公選法違反容疑で(部下に)捜査、尾行を命じたのではないか。 「……」 やりとりからみても公選法違反容疑での捜査でないことは明らかです。牛濱警部は、堀越さんの身分を調べた直後の四月二十一日午後、日本共産党を「警備対象」にする警視庁公安部公安総務課の寺田警部に連絡。前出のような尾行が始まったのです。 ■「正体」隠す日本共産党をねらった尾行そのものが憲法に保障された思想・信条の自由、結社の自由を侵害するものでした。その態勢は大がかりで、多額の税金が使われています。公安警察は、裁判所でもその「正体」をひた隠しにしました。寺田警部への尋問――。 ――警部なら係長ですよね。何係か。 「本件に関係ないと思うので、差し控える」 ――公安総務課の警備対象は。 「……」 ――総務課は日本共産党を警備対象とする課でしょう。違うのか。 「答えは差し控える」 みかねた裁判長が「どうですか」と促しても、まともに答えません。裁判長が直接聞きました。 「証言拒否ということか」 寺田氏「はい」 国民の生命・財産を守るのに必要な刑事警察や交番などは「人不足」を嘆く一方で、公安警察は予算も人員も潤沢で憲法を踏みにじっても秘密の壁で守られる――。そんな国民不在の実態が浮かんできます。 |