2005年2月6日(日)「しんぶん赤旗」

変異型ヤコブ病 原因と対策

BSE牛から感染
血液介して人から人にも


 国内で初めて患者が確認された変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD=新型ヤコブ病)は、世界でこれまで英国を中心に約百六十人が発症し、死亡している難病です。BSE(牛海綿状脳症)の原因と同じプリオンたんぱくが引き起こすという新しい感染症が、いまなぜ国内で発生したのか、対策や危険性、治療法などを厚生労働省や感染症研究所などの見解をもとに問答形式で考えてみました。



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 Q どうして感染するの?

  ヤコブ病と呼ばれる病気は、高齢者にごくまれに発生する脳疾患でした。感染した患者からの脳硬膜移植によって発症する薬害も起きていました。変異型ヤコブ病はこれとは違い、一九九四、九五年に突如、英国で発症しはじめた難病です。

 従来のヤコブ病とは、脳波や脳の病変部が異なり、若年層で発症します。BSEに感染した牛の脳や脊髄(せきずい)など危険部位が混ざった食肉を食べると感染してしまうことが動物実験などでわかりました。

 やっかいなのは潜伏期間が長いことで、英国の例では十六年後とか三十年後の発病というケースもあります。

 今回確認された、国内初の男性患者は一九八九年ごろに英国に一カ月間滞在していました。当時、英国ではBSE感染牛が大量に発生していました。英国で、病原プリオンが蓄積する脳、脊髄などの危険部位の出荷が禁止されたのは一九八九年十一月です。それまでは食用に回されていたわけで、男性患者が危険部位の混じった食肉を食べて感染した可能性が有力視されています。

 英国に行ったからといって感染する確率は極めて低いもので、専門家は「今回のケースはきわめて非典型的な例」とみています。

 英国ではこれまでに変異型ヤコブ患者が百五十三人発生しています。英国以外の欧州や、カナダ、アイルランド、香港、米国などでも患者が発生しました。欧州以外は、英国滞在中に感染したか、もしくは英国人が発病したケースです。

 Q 英国で変異型ヤコブ病が多いのは?

  英国でBSE感染牛が大量に発生し、脳や脊髄が混入しやすい食肉処理システムの問題の解決やBSE対策が後手になってしまったからです。

 英国で、一九八四年に初めて発生したBSE感染牛は、その後一九九二年の年間三万七千二百八十頭をピークに現在まで十八万頭以上にも達しています。危険部位のまじった肉骨粉使用禁止などのBSE対策も立ち遅れ、BSEが世界各地に広がってしまいました。

 Q 日本の対策は?

  日本でBSE感染牛が初めて確認されたのは二〇〇一年九月でした。その後、十四頭のBSE感染牛が確認されています。

 日本政府は、一九九六年に世界保健機関(WHO)が出した肉骨粉使用を法的に禁止する勧告を事実上無視してきました。二〇〇一年十月になって、初めて法的に肉骨粉使用が禁止されました。この時から全頭検査などのBSE対策がようやくとられたのです。

 Q 人から人への感染は?

  通常の生活で、人から人に感染する病気ではありません。厚生労働省によると、日常生活で二次感染を心配する必要はありませんが、献血や血液製剤を介して、人から人に感染する可能性は否定できません。

 日本では、一九八〇年から一九九六年まで半年以上英国滞在歴がある場合、予防的措置として、献血を受け付けない対策をとっていました。今回の患者発生で滞在歴一カ月間に期間を見直しました。これは、公衆衛生上の措置ですが、血液を介した人から人への感染をまねかないための予防対策です。

 Q 検査、予防・治療法は?

  厚生労働省などによると、まだ実用化されていませんが、血液でプリオン病を検査する研究が始まっています。しかし、現時点で、生前の検査や、発症の予防、病気の進行を食い止める治療法は見つかっていないのが実情です。

変異型ヤコブ病を巡る動き
1986年 BSE感染牛を英国が初めて報告
1989年 男性が渡英し1カ月間滞在
1996年 初の変異型ヤコブ病の多発を英国が報告
2000年 日本が一定期間の英国滞在者の献血制限
2001年9月日本初のBSE感染牛を確認
 10月日本が全頭検査と危険部位除去を開始
 12月男性発症
2003年12月米国で初のBSE感染牛を確認
2004年9月男性を従来型のヤコブ病と診断
 12月男性死亡
2005年2月死亡男性を変異型ヤコブ病と確定診断



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