2005年2月5日(土)「しんぶん赤旗」 国内初 新型ヤコブ病死亡男性 英国で感染かBSE(牛海綿状脳症)をひきおこす病原プリオンに人が感染して発症する難病、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(新型ヤコブ病=vCJD)の患者が、国内で初めて発生していたことが四日わかりました。厚生労働省が同日、専門家によるサーベイランス委員会と厚生科学審議会クロイツフェルト・ヤコブ病等委員会(委員長・北本哲之東北大教授)を開き、確定診断しました。 患者は、一九八九年ごろ英国に約一カ月の渡航歴のある男性。硬膜移植や輸血歴もないことから、同省は英国滞在中に感染した可能性を有力視しています。 男性は二〇〇一年十二月に四十歳代で焦燥感やイライラなどの神経症などを発症。病状が進行し、歩行不能や高度の痴ほう状態に陥り二〇〇四年十二月に死亡しました。 サーベイランス委員会は同年九月、従来型のヤコブ病と診断しましたが、新型ヤコブ病の可能性も否定できなかったため、経過を注目。北本哲之東北大学教授が病理検査をおこなった結果、三日に新型ヤコブ病を示す結果がでたため、同省に報告しました。同省はこの患者以外に新型ヤコブ病が強く疑われて、経過観察となっている症例はないとしています。 厚生労働省は四日、発症原因究明とともにこの男性から血液・献血などを介した二次感染の可能性調査を始めました。男性患者は一九九五年以降に献血したことはないといいます。疾病対策課は「通常の生活で、人から人に感染するものではなく、二次感染を心配する必要はない」としています。
変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD) 牛海綿状脳症(BSE)の原因となる病原プリオン(たんぱく質)に人が感染して発症する難病。脳内で病原プリオンが増え、脳がスポンジ状になって脳障害や運動障害などをまねきます。従来のヤコブ病(CJD)と違い、若年層で発症し、死亡するまでの平均期間が六―十三カ月程度です。厚生省疾病対策課の最近の調べによると、患者数は英国約百五十人、フランス六人、アイルランド・イタリア・カナダ・米国でそれぞれ一人。 解説感染防止策強化が重要新型ヤコブ病が日本で初めて確認されたことで、BSE対策とともに、病原プリオンが血液を介し人から人に感染しないような防止対策の強化も重要になってきました。 この病気はBSEに感染した牛の脳、脊髄(せきずい)などを摂取して発症しますが、厚生労働省は、血液を介して人から人に感染する可能性が否定できないとしています。このため、予防的措置として英国に一九八〇年から一九九六年までに通算六カ月以上滞在した人の献血は制限されていました。二〇〇一年三月からはアイルランドなど六カ国にその対象が広げられています。今回、渡航歴一カ月でも患者が確認されたことで、献血制限期間などの見直しも検討されています。日本は血液を介した人から人への感染防止措置の徹底などが、欧米に比べても立ち遅れています。 宇野龍彦記者 |