2005年2月2日(水)「しんぶん赤旗」

元大阪高検部長に実刑

暴力団接待 調活費糾明にも言及

大阪地裁


 捜査情報を漏らす見返りに暴力団関係者から接待を受けたなどとして、収賄や詐欺などの罪に問われた元大阪高検公安部長三井環被告(60)に対する判決が一日、大阪地裁であり、宮崎英一裁判長は懲役一年八月、追徴金約二十二万円(求刑懲役三年、追徴金約二十八万円)の実刑を言い渡しました。収賄の一部は無罪としました。三井被告が告発していた検察の調査活動費の不正流用疑惑について裁判所は「調活費問題は社会的に重大。検察幹部として被告自ら関与したという供述は軽視できず、糾明が必要なことは明らか」と指摘しました。

 同裁判長は収賄などについて「検察官の職務行為の公正に対する信頼を著しく失墜させた」と厳しく批判。同被告は判決言い渡し後、収監されました。弁護側は控訴しました。

 三井被告は不正流用疑惑の告発を阻止する「口封じ逮捕だ」などとして、公訴棄却か無罪を主張。検察側と全面的に対立してきました。

 これに対し、同裁判長は「暴力団関係者との交遊を背景とした犯罪は、到底放置できるような事態ではない」と起訴の正当性を認定しました。

 最大の争点となった収賄では、贈賄側の暴力団関係者の供述の一部に「合理性、信用性に疑問がある」としつつ、大部分に信用性を認め、「そもそも暴力団関係者との交遊自体、検察官の職にある者としては厳に慎むべきだ」と指摘しました。


解説

軽視できない裏金証言

 検察の調査活動費(調活費)の不正流用疑惑についての告発に、判決は「被告は事情を知り得る立場にあり、証言は具体的。供述は軽視できず、糾明が必要」と踏み込んで指摘しました。

 調活費は、もとは検察が情報提供者に支払う謝礼金。これが「すべての検察庁ですべて自動的に裏金にまわっている」と告発したのが大阪高検公安部長だった三井被告です。

 同被告は人事上の不満などからマスコミに告発しようとした矢先に、大阪地検に逮捕され、「逮捕は口封じ」と主張していました。

 起訴後、三井被告は法廷内外で不正流用を具体的に告発しました。

 裏金のつくり方は、「架空の情報提供者をつくり、謝礼を支払うふりをして虚偽の支出伺い書を作成。謝礼受領の領収書を偽造する」「事務局長が裏金を金庫に入れてプールする」。

 使途は、「一割ぐらいが職員へのせんべつ、冠婚葬祭などに使われ、残り九割が検事正、検事長らの高級料亭、高級クラブでの飲食代、ゴルフ代、マージャン代に使われた」と説明し、みずからも地方検察庁の次席検事だった時に接待で「一回十万円から三十万円の裏金を使った」と言って高級料亭の名前を列挙しました。

 これが、「内部告発があり、一九九九年四月以降、流用をやめることになった」といいます。調活費について法務省は不正流用の事実を否定していますが、一九九八年度に五億五千万円以上あった予算は毎年急減し、二〇〇二年度に約八千五百万円程度に。ここ数年八千万円前後で推移しています。

 調活費の不正流用は、元副検事が仙台高裁などでの領収書偽造体験を告発するなど、三井被告のあとも告発が続いています。裁判所も看過できなかった疑惑に対し、検察がどのような態度をとるかがあらためて問われています。井上歩記者



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