2005年1月31日(月)「しんぶん赤旗」 ゆうPress『CanCam』が描く女性像“エビ鯛”で愛確かめる?「モテ」の周辺 第2弾どうしたら男性にモテるのか−−。そんな読者の興味を引こうとする手法は、いま女性誌に広くみられます。その流れを先導したともいえる『CanCam(キャンキャン)』の誌面から、「モテる女性像」とはいかなるものか、探りました。先週に引き続き「モテの周辺」を追います。 田中佐知子記者 (※ ●は、ハートマークです。)
『CanCam』は、二十代前半の女性を読者層にもつ、月刊ファッション誌。「モテ指向」への転機が訪れたのは二〇〇二年です。 「不況の影響か、二十代前半の女性はキャリアを積むより、職場やその周辺で高収入の夫を見つけたい人が多い」と編集長が分析。「上品でかわいくて、ちょっとセクシー」な「モテ服=東京エレガンス系」を打ち出します。その結果、〇一年に平均三十二万だった発行部数は、昨年十月号で五十三万部にまで伸びたといわれます。 特集のタイトルを見ると―。「男のコが好きな『激モテ★デニムスタイル』6」「めちゃ●モテNEW春髪」「完全無敵めちゃモテ肌レシピ」「この秋、話題は究極のめちゃモテフレグランス」。洋服、髪型、メイクアップ、香水と、すべてに「モテ」の付加価値がつきます。 「キラ★男」登場さらに「キラ★男」と呼ばれる男性が、誌面のあちこちに登場します。「キラ★男」とは、医学部の学生、外資系サラリーマンなどのいわゆる“勝ち組”。そんな「キラ★男」がコメントし、記事にいっそうの説得力を持たせます。 「ツイードのワンピースって、品があって、お嬢さんぽくて好き。会社帰りに会うなら、これくらいきちんとめの格好で来て欲しいな」「やっぱりすっぴんでもキレイであってほしいな。メークしてるときとあまりに差があるのは、ぶっちゃけショックを隠しきれない」 総じて「女らしさ」を求めるのも特徴です。「スカートのひざ出しorひざかくしどっち?」「女のコの服でまずどこから見る?」「こんなカッコはカンベンワースト3」などと、「キラ★男」の願望は次つぎ引き出されていきます。モテ術は「男のコがパクッと食いつく最新会話ネタ30」とコミュニケーション術もフォロー。 カラリと明るく男性の好みに積極的に耳を傾ける一方、女性の側からは高価なプレゼントを要求します。昨年十二月号の別冊付録「聖夜のおねだりリスト280」には、「憧(あこが)れブランドで彼の愛を再確認」と、十数万―八十数万円のジュエリー、時計のたぐいが並びます。 巻末には「男のコのツボを押さえ、かつ、お財布に優し〜いものを中心にセレクト」、名づけて「エビ鯛(たい)グッズカタログ」も。こちらの値段は一万円からと低め。男性の趣味に合わせるが、もらう物はもらうという処世術が、カラリと明るく描かれています。 資格取得講座の広告にさえ、「恋もオシャレも資格があればもっと充実! メチャ●モテOLプロジェクト」の見出しが躍ります。 キラ★男 主導は寂しい装う上で周囲の目を意識するのは自然なことですが、「キラ★男」の趣味が、女性の装いを先導する誌面構成には、寂しさを感じました。 『CanCam』の「めちゃモテ」路線が勢いを持つ背景には、自立の困難な社会に生きる女性たちの不安と閉塞(へいそく)感があるのではないでしょうか。 結婚情報会社の意識調査によると、「早く結婚したい」と答えた女性の割合は、〇三年の新成人で11・0%だったのが、今年は23・9%に増えています。 新宿・伊勢丹の二階にある「シンデレラシティ」。若い女性向けのブランドが並びます。各店頭には『CanCam』などの女性誌を置き、それぞれのブランドが掲載されているページを開いてアピール。店員の女性は「雑誌に載っている洋服を買いにくるお客さんが多いので」といいます。 雑誌の読み方、距離の取り方は、人それぞれさまざまですが、みなさんは女性誌に何を求めますか? 「めちゃ●モテ女性誌」とどう付き合っていますか? (取材を終えて) 先週の記事に感想届きました勝ち組、負け組と同じ面白かった。えびちゃんてスゴイ人気だもんね。しかし、ああいう格好をするとモテ度が違うとかいうけど、そういうことで態度が変わる男って、どうなんやろと思うし、それに合わせて自分を作るのもどうなんやろ。 世の中で勝ち組、負け組という言葉が使われるように、もてるもてないというので人の勝ちを決める風潮があるように思う。男からチヤホヤされるには、どうしたらいいか的な目線で書かれている女性誌が多い気がします。魅力的な人はモテるし、それはすてきなことだけど、モテるために自分を作ったり、うわべを取り繕うというのは違うと思いますね。(翠 30歳 福岡県) やっぱり中身が大事きれいにこしたことはないんだけど、それだけじゃない。「モテ系」かどうかで判断するのはどうかな。おれは作って美人より、すっぴん美人がいいし、中身にしてもそう。男でもメンズエステとかあるけど、金をかけたくはない。やっぱり中身が大事。 雑誌で取り上げられたりすると、みんな同じような格好をするのは「えっ」て感じ。「モテ」という言葉にもひっかかる。異性一般から注目を集めたいのか、意中の人に振り向いてもらうためなのか。あるいは同性のなかで抜きんでたいというライバル意識なのか、それによって評価がかわってくるかも。(トオル 28歳 福島県) お悩みHunterコンプレックスを力にして兄妹と比べ愛情に差 父と母が私に冷たいQ いま両親と冷たい関係にあります。兄は優秀な大学生で私は高校二年生、妹は有名大学をめざす中学三年生。それにくらべ、私は出来が悪い息子で、大学受験もあきらめようかという状況です。両親の二人を見る目が私とぜんぜん違うし、愛情のかけ具合も違います。小さいころからずっと、そのことを感じてきたし、だんだんと家庭に居場所がなくなっています。悩みが募っています。(17歳、男性。東京都) A おれも、学年でトップクラスの成績を収めていた一つ年上の姉と、両親からの寵愛(ちょうあい)を一身に受けている腹違いの弟にはさまれ、いつも比較されていると感じながら少年時代を送りました。そして、比較なんかじゃなく、そのままの僕を見てほしいんだと強く願いながら、卑屈な自己顕示を重ね続け、やがては家から追放されてしまいました。 あなたが今、感じている疎外感は、おれにとって決して他人ごとではありません。だからこそ、そんなあなたに心を込めて言いたい。コンプレックスは、今より先に進むための確かなエネルギーになる。 しかし、コンプレックスに支配されてしまったら、必ず多くのものを失ってしまう。コンプレックスに支配されるのではなく、コンプレックスをエネルギーとして利用できる人であってほしいと強く願います。 大学に進学することがすべてではない。しかし、現実から逃避する手段として進学を断念するなら、おれはそれに賛成できない。なぜなら、逃避の先にあるのは、傷のなめあいか、孤独しかないことをおれ自身、嫌というほど経験してきたから。コンプレックスをエネルギーに変えて、一歩一歩前に進んでほしい。後悔しないように。 ヤンキー先生 義家 弘介さん 明治学院大学法学部卒。99年から母校北星学園余市高校教諭。テレビドラマになった「ヤンキー母校に帰る」の原作者。 |