2005年1月30日(日)「しんぶん赤旗」 解説海老沢前会長、NHK顧問辞退視聴者の怒りわかっていない視聴者の厳しい批判が顧問就任を撤回させました。海老沢勝二前NHK会長が顧問に就任したことが明らかになってから、視聴者がNHKに寄せた抗議は六千五百件(二十八日午後七時まで)。二十五日の海老沢会長辞任、顧問就任、撤回、三日間のドタバタにNHKの体質が見て取れます。 二十八日の橋本元一新会長の会見は奇妙なものでした。顧問辞任については「辞退したいと申し出があったので、受理した」というだけで、なぜ辞任かについては言及無し。視聴者からの批判を記者から問われ「こんなに大きな波だとは思わなかった」と無責任に答えるのみです。 顧問に委嘱した理由は「慣例」と「引き継ぎに期間が必要だから」というもの。海老沢氏以前に三人の会長が途中辞任していますが、顧問に就いた人はいません。まして、辞任した笠井鉄夫前副会長、関根昭義前放送総局長までなぜ顧問に就任させたのでしょうか。説明になっていないのです。 辞任した三人そろって顧問で残る。視聴者が、なにが改革か、なにも変わらないではないか、と思うのは当然です。受信料の不払いが五十万件にもなろうという視聴者の怒りの中身をNHK幹部は理解していません。 二十五日の海老沢氏の会見でも、会長辞任の理由は語りませんでした。NHK番組への政治介入には触れず、石原邦夫経営委員長も「関係ない」の態度に終始しました。その日発表した「再生に向けた改革施策」にも政治介入問題への言及はなく、言論機関としてNHKはどうあるべきかという問題意識は皆無です。 特定の番組について、政府・与党の政治家に事前に説明に行くことを「通常の業務」とする。「圧力はかけていない」と言う安倍晋三自民党幹事長代理、中川昭一経済産業相の発言を繰り返し放送し、みずからを合理化する。報道機関としてあってはならない政府・与党との日常的癒着。そこに多くの視聴者は批判の目を向けています。 公共放送として、報道機関としてどうあるべきか。NHK新執行部は視聴者の声、職員の声を虚心に聞くところから改革を進めてほしい。 荻野谷正博記者 |