2005年1月15日(土)「しんぶん赤旗」
世界に波紋
NHK従軍慰安婦番組の改ざん
“歴史隠ぺい 政治家が圧力”
官房副長官だった自民党の安倍晋三幹事長代理と中川昭一経済産業相が、NHKに圧力をかけて第二次世界大戦中の従軍慰安婦の被害をテーマにした番組を改ざんさせたという問題は、アジア諸国各紙でも報じられ、海外に大きな波紋を広げています。このなかで各紙は共通して、小泉政権与党の中心的な政治家による公共的な報道機関への不法、不当な圧力で、日本の侵略戦争の歴史の事実と戦争責任に関する問題について番組内容が変更された点に注目しています。
韓国 市民団体や報道 |
「被害者は憤っている」
「慰安婦」問題に十年以上取り組んでいる市民団体・韓国挺身隊問題対策協議会の尹美香(ユン・ミヒャン)事務総長は、NHKの番組改ざん問題について、韓国紙ソウル新聞十三日付で「日本は過去の歴史の隠ぺいを中断し、今回の事件を自己反省のきっかけとすべきだ」と強調しました。また「政権党が圧力を加え、事実報道を妨げたことは、ある程度は予想されていたことであり、今も続いているだろう」と指摘しました。
「慰安婦」被害者が共同生活する「ナヌムの家」関係者は同紙に、「日本の不道徳と良心の欠如をあからさまに示すもの」だとし、「生存している数少ない被害者のおばあさんたちも憤っている」と語りました。
韓国女性団体連合は「日本は、全世界の女性・人権団体が求めている真相究明と謝罪・補償を無視してはならない」と主張しました。
韓国の全国ネットKBSテレビは十二日、「日本軍によって被害を受けた女性の問題を扱ったNHK番組が、政治家の圧力で変更、放送された事実が明るみになり波紋を広げている」と報道。「市民団体などが、圧力をかけた政治家と、政界を意識したNHKの双方を批判し、真相究明と関係者の責任を問うよう求めている」と伝えました。
韓国のケーブルテレビYTNは十三日、日本の「野党は『最も悪質な政治介入』だと強く批判し、今月開かれる国会で追及するとしており、政治問題化している」と伝えました。
中国青年報 |
「“報道審査事件”を暴露」
【北京=小寺松雄】中国共産主義青年団が主管する中国青年報十四日付は、NHKの従軍慰安婦番組改ざんに安倍晋三自民党幹事長代理らがかかわっている問題について「日本メディアが歴史問題の“報道審査事件”を暴露した」との見出しで報じました。
同紙は朝日新聞の十二日付第一報を紹介しつつ、NHKが旧日本軍の従軍慰安婦制度に関する番組を制作したが、「関係方面の圧力で改ざんされた」としています。
マレーシア華字紙 |
「日本批判の大部分削除」
マレーシアの華字紙星州日報十四日付は、安倍晋三自民党幹事長代理らがNHKに圧力をかけ戦時中の従軍慰安婦の被害をテーマにした番組を改ざんさせた問題について、「日本で政治家が、慰安婦模擬裁判に関する報道でNHKに圧力」と報じました。
同紙は、「日本の与党自民党の安倍晋三幹事長代理は十二日、二〇〇一年、NHKにたいし日本の非政府組織がおこなった第二次世界大戦中の慰安婦の模擬裁判の報道について内容変更の圧力をかけたのを認めた」とのべ、こう報じています。
「日本の女性の権利擁護組織が二〇〇〇年十二月に東京で開いた模擬裁判は、昭和天皇裕仁にたいし第二次世界大戦中に日本軍が被占領国の女性に慰安婦になるよう無理強いするのを放任したとの罪名の判決を下した」「NHKは翌年一月、この模擬裁判を特別番組で放送したが、その際、日本の戦時中の行為を批判した大部分が削除された」
同紙はさらに、「現在、五十歳の安倍晋三氏は、日本の未来の首相候補者と見なされている」と指摘。「この番組をめぐっては日本の女性団体がNHKと番組製作会社を相手取り、当初の内容が改ざんされたとして損害賠償請求の裁判を起こしている」と結んでいます。
国会で解明必要
一致して野党要求
日本共産党、民主党、社民党の野党三党の国対委員長が十四日、国会内で会談し、政府・与党の圧力によるNHK番組改ざん問題について、二十一日召集の通常国会で事実関係の解明を求めていくことで一致しました。
日本共産党の穀田恵二国対委員長は、NHK番組への政治介入は言論や表現、報道の自由を保障し検閲を禁止した憲法二一条や、放送内容への外部からの介入を禁じた放送法に反するものであり、従軍慰安婦問題で「お詫(わ)びと反省の気持ち」を表明した九三年八月の政府見解にも反する重大問題だと指摘。当時の官房副長官と自民党衆院議員の関与について、国会での事実関係の解明が必要だと提起しました。
野党三党の国対委員長は同日の与野党国対委員長会談で、一致して事実解明にとりくむよう主張。与党側は回答しませんでした。