2005年1月14日(金)「しんぶん赤旗」

「介入は日常 報道現場は委縮」

「会長はすべて了解していた」

会見要旨


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NHK「慰安婦」番組改変問題での会見中に声を詰まらせる長井暁チーフプロデューサー=13日午前、東京・渋谷区の東武ホテル

 この問題で四年間悩んだ。昨年九月にNHKにコンプライアンス(法令順守)推進室が設置され、内部通報制度ができた。NHKの自浄能力を期待して昨年十二月九日に内部通報した。

 事件を調査して事実を明らかにしてほしいと思ったが、一カ月たっても関係者へのヒアリングもされていない。マスコミに事実を語るしかないと思った。

 末端の職員の不正は発見しだい調査し、公にするが、会長や側近がかかわったできごとは調査する能力も意思もない。そんな海老沢体制のもとではNHKの本当の改革は難しい。

 海老沢体制になってから放送現場への政治介入、放送が中止になったり再放送が中止になったりするのが日常茶飯事になってきた。報道の現場では政府に都合の悪い番組の企画は出しても通らないという雰囲気がある。委縮した空気がまん延している。海老沢体制のもっとも大きな問題は政治介入を恒常化させた点にあると考えている。

NHKが危機に存立も危うい

 NHKが危機にある。受信料の不払いがどんどん増えている。現場の営業スタッフの努力は並大抵じゃない。存立も危うい。視聴者の信頼を回復し出直す必要がある。海老沢会長は一日も早く辞任し、側近で固められた経営陣も一新してもらいたい。

 今回、「会見はやめたほうがいいよ。不利益をこうむるかもしれない」と同僚、友人からの電話もあった。おそらく不利益をこうむるだろう。私もサラリーマンで、家族もある。家族を路頭に迷わすわけにはいかない。この四年間非常に悩んで。(涙声)…でも…やはり真実を述べる義務がある…。

 今回の問題は政治がらみだとわかっていたが、安倍(晋三)さん、中川(昭一)さんとは知らなかった。知ったのは放送の後、ある上司から教えられた。

 (番組改ざんの)あの時、徹底的に反対すべきだった。言い訳になるが、右翼とかの攻撃があり、けんそう状況の下、突貫工事で何日も徹夜が続く状況だった。

元会長も会長も政治家と一体化

 最後までたたかえなかった理由は、現場に最後に投入されたディレクター三人が全員処分の対象になると考えたからだ。

 (二〇〇一年一月二十九日の番組改ざんでは)元慰安婦の証言はまだ手がついていなかった。これが放送され視聴者に伝わることは一定の意味があると考えた。しかし、現実的には甘い判断で、翌日、放送で削除されたのは証言部分だった。二十九日の時点で受けてしまったことが、最後の三十日に踏みとどまれなかった原因だ。今は後悔している。放送の数時間前で組合も動けなかった。

 一連の経過を海老沢会長は、すべて了解していたと思う。経緯は逐一、報告されていた。この問題については総合企画室と番組制作局の会長あての報告書が存在する。

 ジャーナリズム論として、国家権力・政治権力とジャーナリズムの距離という問題がある。欧米でジャーナリストを志すときのイロハは、政治権力には肉薄する必要があるが癒着しちゃいけないということだ。

 NHKでは、てらいも贖罪(しょくざい)意識もなく、政治家と一体化できる方が偉くなっている。島(元会長)さんも、海老沢(会長)さんもそうだ。

 NHK行動倫理憲章をつくったが、ある派閥のために行動したり、ある政治家の委託を受けて放送内容に影響を及ぼすようなことは、不正行為と規定することが必要だ。



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