2005年1月12日(水)「しんぶん赤旗」 NTTグループ企業年金、月1万円以上給付減違法な手口で「同意」強要労働者、退職者から怒りの声NTTグループは、退職金の一部を「原資」にしたNTT企業年金の給付を月額一万円以上も大幅に引き下げることを計画。年金受給権者に、減額に「同意」するよう違法な手口で迫っています。経常利益一兆五千六百億円(〇四年三月連結決算)をあげながら、さらなる「リストラ」をねらうNTT。労働者と退職者に大きな怒りが広がっています。原田浩一朗記者 NTTグループの企業年金は、六十歳定年制と退職金制度の改悪とのセットで、一九九二年にスタートしました。当初の給付利率は7・0%でしたが、現在の利率は4・5%に低下しています。 NTTは二〇〇三年十二月、「資産運用環境の悪化、加入員の減少と受給者の増加により…財務状況が悪化している」ことを理由に、制度の抜本的な「見直し」を提案。すでにNTTを退職し、年金受給契約を結んでいる人の給付利率を、長期国債利回りに連動させて大幅に引き下げ(利率1・5%を予想)しようとしています。 実施されると、月一万円以上の減額となり、年間では十数万円。制度として確立している十五年の受給期間全体では百数十万円も減額になるケースも少なくありません。 すでに年金契約を結んでいる受給権者の年金が減額されるのは異例のことで、生活設計を大きく狂わせるものです。このため、確定給付企業年金法では、「掛け金を拠出することが困難になると見込まれるため、減額することがやむを得ない」と認められ、かつ受給権者の「三分の二以上の同意を得ること」が必要です。厚生労働省の認可を受けなければなりません。 「同意」を得る場合、“その減額になることを明確に伝え、あくまでも「本人の意思による同意」表明であり、「強制」があってはならない”と厚労省が定めています。 ところが、NTTは、まともなやり方では「同意」がえられないと危機感をもち、なりふり構わぬ違法な手口で労働者や退職者に対し、年金減額に「同意」するよう迫っています。 「挙手させて確認」「電話で15回要求」【「五十歳退職・再雇用」制度により、NTTの地域子会社に勤務している労働者のケース】 ▼NTTグループ年金に加わっていない地域子会社の課長が労働者に個別に声をかけ、「あなたは同意書を出すつもりがあるのか」「もう出しましたか」といっている。(全国各地。これは、NTTグループの指示にもとづいておこなわれていることを示しています) ▼課長が「同意書」を出している人、出していない人を挙手させて確認し、出していない女性社員に「同意書を出していないのはあなただけ。あなたが出さないことで会社がつぶれても責任を負えますか」といって同意書を出させた。(福岡) 【すでに年金生活にはいっている退職者のケース】 ▼職場の元上司から十五回も電話で「同意書」を出すよういわれ、「ノイローゼになる」と通信労組に相談。(三重) ▼OB会の命令ということで、かつての部下が家庭訪問をして「同意書」を出すよう説得している。同意・不同意の情報は個人情報なのに、なぜOBが知っているのか。犯罪ではないか。(広島の受給者からの告発) 内部文書は語るNTTグループが「同意書」を出させるため、違法行為を組織的におこなっていることが「NTTグループ規約型企業年金制度の見直しにおける同意徴集活動について」という内部文書で明らかになっています。 文書では、「制度見直し反対者が予想以上に存在していることが判明」「同意手続きにあたっては、棄権(同意書を送付しない)は反対とみなされる」「現状のままでは三分の二以上の同意取得は困難」と強調。「棄権層への個別勧奨等、強力な取り組みが必要」として、「(1)退職・再雇用者からの原則100%の同意取得(2)OBに対する電話勧奨、個別訪問等の集中的とりくみ、が必須」とのべています。 また、別の文書で「対応にあたっては、対外的にも『強制、強要』と捉(とら)われないよう十分注意する必要がある」と何度も念を押しています。 「本心でなければ同意しないで」と厚労省労働者やOBからの相談や怒りの声を受け、通信労組は、厚労省にたいし、違法な「同意書」提出の強要をただちにやめさせるようNTTを指導せよと求めています。 厚労省は「本心の同意でなければ同意しないでください。本心での同意でなければ、『同意書』はただちに撤回してください」と通信労組に答えています。通信労組の岩崎俊委員長は「違法な同意書の強制は、NTT自身が道理のないことを自覚している表れです。たとえ同意書を出してしまっても、本心でなければ同意書の撤回を表明しましょう」と話しています。 企業年金一部の大企業で実施されている制度で、労働者が退職金の一部を拠出し、企業も掛け金を拠出して基金をつくり、これを運用して退職後に年金を受け取るもの。不十分な公的年金を補い、退職後を支える役割を果たしています。 |