2005年1月10日(月)「しんぶん赤旗」 米軍の環境規制 緩和へ米国防総省新方針 汚染物質たれ流し?日本の基地にも影響【ワシントン=浜谷浩司】「国家安全保障」を理由に環境規制の緩和を要求する米国防総省の新方針が、米国の環境団体の間で問題になっています。新方針は国外に駐留する米軍にも適用されることから、在日米軍の姿勢にも変化が出てくる可能性があります。 国防総省は昨年十月、「環境と安全、職業上の健康」に関する同省指令の改定案を取りまとめました。同案は、従来適用されてきた一九九六年二月の指令に比べ、米軍の活動に対する環境上の規制や配慮を大きく後退させています。 具体的政策記述を削除この「指令四七一五・一」は、大気や水などの汚染や野生動物、文化遺産などの保全、弾薬類の事故防止や緊急時の対応など、米軍活動にかかわる環境分野への基本政策を規定したもの。 従来の指令は、環境対策で「指導性を発揮」し「国防任務を支援する」ことを同省の政策として掲げていました。新たな指令草案では単に「国防任務の維持」がうたわれているだけです。 さらに、従来の指令は「汚染を防止し環境悪化の要因を最小限にする」など、具体的な政策を十四項にわたって記載していました。改定案からはこうした記述も削除され、「リスクに対処する」などの表現だけになっています。 受け入れ国対立も予想こうした規定は、米国内だけでなく、米軍の世界的な活動に適用されます。新指令草案は、国外について「受け入れ国および国際組織」との間で、これらの問題に関して「開かれた生産的な対話」を行うとしています。 旧指令では、「国際的取り決めや地位協定などの順守」をはじめ、環境規制にあたる「受け入れ国当局者との協力」などがうたわれていました。新指令は、これらの規定を全面的に削除するとしており、政策の後退が懸念されています。これが実施されれば、受け入れ国との対立が増すことが予想されます。 国防総省は二〇〇二年以来、議会に対して、米軍活動に対する環境規制の適用除外を求めてきました。射爆場の原状回復や基地からの汚染物質たれ流し規制、演習などでの大気清浄法の適用、野生動物保護などを除外しています。 民間団体「環境への責任を求める公務員」(PEER)のルーシュ事務局長は、国防総省がこの政策転換を議会による吟味などの広範な議論なしに行おうとしており、同省は「自分の論理と施設運営だけに関心を持つ組織に再編されつつある」と批判しています。 |