2005年1月5日(水)「しんぶん赤旗」

車両火災 身近な危険

消防車出動の8回に1回

年7,000件超 電気配線原因が11%


 消防車出動八回に一回が車両火災だ――。車両火災が依然、年間七千件を超えています。消火器で消し止めたものなどを含めると一万件以上あるといわれ、車両火災の危険は身近に広がっているといえます。なかでも電気配線を原因とする火災も多く、専門家が警告を発しています。

 昨年十二月二十一日に発表された「二〇〇四年版 消防白書」によると二〇〇三年の車両火災は、七千三百六十六件。前年より四百十九件減っていますが、消防車が出動した全火災件数(五万六千三百三十三件)に占める割合は13・1%(前年12・2%)で、ほぼ八分の一です。死者三百十三人、負傷者三百八十一人にのぼります。

 出火原因は、放火(疑いを含む)が千九百五十三件(26・5%)と最多。車自体に起因する原因では、電気配線が八百十八件(11・1%)、排気管が七百九十八件(10・8%)です。

 車両火災の事例を集めた『火災から学ぶ』(火災調査研究会編著)は「国産車は電気系が42%を占め、外国車では燃料系が50%以上を占める」と指摘しています。

 最近の車の特徴は、制御システムや電動装置をふんだんに使用していることです。乗用車の電気配線は合わせると百メートルを超え、三十年前の約十倍の長さです。

 配線は束になり狭い空間に押し込まれ、エンジンの熱や振動、走行時の振動を受けています。その結果、配線の被覆が劣化・損傷し短絡するケースが最も増えています。

 『車両火災はどうして発生するのか』という著書があり、車両火災を専門に調査する森興春さん(65)は「車の配線被覆の寿命は八年ほど。それを超えるとひび割れから、いつ漏電してもおかしくない状態だ。カーナビなど電装品の後付けや改造は絶対に危険だ。メーカーの製造ラインの配線とは振動対策・配線始末が基本的に違う。安易に簡便な方法で自分で取り付けることはやめてほしい」と警告しています。


欠陥認めさせ勝訴

消防署 「原因はオイル漏れ」

埼玉の高橋さん

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首都高速で炎上した高橋さんのベンツS600

 車両火災の危険を身をもって体験した人がいます。埼玉県新座市の高橋昌詩さん(61)です。

 〇一年三月九日、首都高速道路でメルセデスベンツS600(六〇〇〇cc、二〇〇〇年六月登録)のエンジンルームから出火。車前方を焼失しました。

 高橋さんは、隣車線の運転手から白煙を注意され駐車。その直後に右前タイヤの奥から火柱が燃え上がりました。「爆発するのではないか、動転した」と語ります。

 しかし、販売元は「たばこを車内に落としたのではないか」などと不誠実な対応でした。

 高橋さんは、裁判に訴え、東京地裁は〇三年五月、輸入元のダイムラークライスラー日本と、販売元のヤナセ埼玉に賠償を命じました。(同年十月東京高裁で確定)

 判決の決め手は、消防署が作成した「出火原因判定書」です。エンジンルーム内でオイルが漏れ排気管に落下し発火したものと判定しています。

 実は、このオイル漏れは、メーカーも欠陥と認識し、火災の半年前にリコール(回収・無償修理)を届け出、修理していた同じ個所です。

 判決は、出火原因を車の欠陥にあるとして、修理した販売店にも賠償を命じたのです。

 国土交通省自動車交通局リコール対策室によると、〇二年から〇四年一月までに、火災の危険があるとして届けられたリコールは十九。対象台数は五十万台を超え、そのうち六十一件の火災が起きています。



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