2004年12月31日(金)「しんぶん赤旗」

爆音被害深刻

最新鋭の米空母艦載機
FA18スーパーホーネット配備

100デシベル超が20%に倍増

神奈川・厚木基地


 神奈川県の在日米海軍厚木基地(大和、綾瀬両市)では、横須賀基地を母港とする空母キティホーク艦載機の爆音が地域住民を苦しめてきました。大和市の騒音調査は、その爆音が、艦載機が最新鋭の戦闘攻撃機FA18スーパーホーネットに代わった十月以降、いっそう深刻になったことを裏付けました。

 神奈川県・河野建一記者


写真
厚木基地に着陸するFA18Fスーパーホーネット=神奈川県綾瀬市

 神奈川県の在日米海軍・厚木基地(大和、綾瀬両市)で、米空母キティホーク艦載機として最新鋭の戦闘攻撃機FA18スーパーホーネットの配備が完了した十月以降、米軍機の騒音でとくに激しい一〇〇デシベル以上(電車通過時の線路わきの騒音に匹敵)が二倍以上に増えたことが三十日までに、大和市の測定結果から分かりました。

 大和市は、同基地滑走路北一キロ地点の住宅地で騒音測定(七〇デシベル以上、五秒以上継続音)をしています。

騒音は118デシベルにも

 それによると、スーパーホーネット配備前の二〇〇三年十月から〇四年九月までの七〇デシベル以上の騒音回数(二万五千二百八回)のうち、一〇〇デシベル以上は全体の約9%(二千三百十四回)でした。

 ところが、配備後の今年十、十一の二カ月間の騒音(三千七百三十七回)で一〇〇デシベル以上は、約20%(七百四十七回)と倍増しました。もっとも激しかった騒音は一一八デシベルに達しました。

 同基地には、FA18Cホーネットの改良型で、エンジン出力が35%増強されているスーパーホーネットのFA18F(二人乗り)十三機が昨年配備され、今年十月二日にはFA18E(一人乗り)十機、同月六日には同三機が飛来。住民から「子どもがおびえる」「電話が聞こえない」「学校の英語のヒアリングテストが中断した」など市民生活に深刻な影響を広げています。

グラフ

年末年始中止を

 スーパーホーネット配備に伴う騒音の激化を受けて、基地周辺の大和、綾瀬、座間、海老名の各市長、厚木基地周辺五市議長会基地対策協議会は相次いで、年末年始の飛行中止を、国と米軍に要請しました。


脅える子ども、授業中断

 大和市南林間に住む出崎さかえさん(70)は「毎日、米軍機が二機ぐらいでゴォーと飛んで、とにかくひどい。電話が一番困ります。話が中断して、会話ができない状態になります」と怒ります。

 大和市中央林間に住む和田とも子さん(37)も「米軍機の音で、息子の小学校の授業が中断するときもあります。戦闘機が変わって音がうるさくなってきました。防音工事をしていても、米軍機が家の真上を続けて飛ぶので本当にうるさい。この戦闘機が、人を殺しているかと思うと本当に許せません」と訴えます。

 今年一月から十一月までに、米軍機の爆音に関する県内の苦情件数は三千八百九十一件。月平均三百五十四件ですが、スーパーホーネット配備後の十月は四百八十一件、十一月は四百三十二件と、苦情は月平均を上回っています。基地から少し離れた川崎市北部や東京都町田市でも、苦情が増えています。

騒音測定を要請

 こうしたなか、防衛施設庁も十二月十三日から十七日まで、スーパーホーネットの騒音への影響を、住宅防音工事助成対象区域の見直し作業として、基地周辺約八十カ所で騒音測定作業を実施。周辺自治体や日本共産党の強い要請におされて実施したものです。

 厚木基地での飛行は、日米合同委員会での取り決めで、午前六時から午後十時までとされています。しかし、米軍が運用上必要とすれば、早朝、深夜、休日でも飛行することができます。

 米軍では、空母の出航前、艦載機のパイロットには、発着訓練が義務付けられています。

 横須賀が空母の母港であるため、厚木基地では、空母の第二の飛行甲板として、発着訓練が繰り返されるのです。

 米軍は、在日米軍基地を海外派兵の拠点として強化し、フルに活用しています。厚木基地周辺での爆音被害の激化は、そのことと深く結びついています。

 米軍は現在、アジア太平洋地域に空母をもう一隻増やす空母二隻体制の計画をすすめ、その一隻は原子力空母といわれています。

母港撤回求めて

 県平和委員会の鈴木和弘常任理事は「この空母戦闘群の母港にはハワイが予定されていますが、朝鮮半島や台湾情勢の変化で日本周辺海域に展開すれば、すぐ近くに修理や補給能力の高い横須賀基地があるので、ハワイまで帰ることは考えにくい。実際には横須賀を拠点として任務に就くことが想定され、必然的に厚木基地での離着陸訓練が多くなるのではないか」と指摘します。

 日本共産党は、大森猛前衆院議員と畑野君枝前参院議員、党地方議員が、外務省と防衛庁に爆音解消を申し入れるなど、艦載機の飛行訓練中止や空母の母港撤回などを要求してきました。

 大森氏は「厚木基地の爆音の激化は、米軍基地が県民にいかに有害かを示しています。基地強化に反対する県民の運動があらたに広がっています。力を合わせて、頑張りたい」と話しています。

 FA18スーパーホーネット 横須賀基地を母港とする空母キティホークの艦載機部隊、第二七攻撃戦闘中隊が使用する戦闘攻撃機。これまで配備されていたFA18ホーネットより長い航続距離を備えていますが、航続距離を伸ばすために、補助タンクを大型化し、機体も推力も増幅されています。そのため、エンジン出力が35%増大しています。




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