2004年12月30日(木)「しんぶん赤旗」

津波への対応 日本は

予報より早い襲来の可能性も


 スマトラ島沖の巨大地震で発生した津波は、インド洋沿岸諸国に甚大な被害をもたらしました。震源から遠く離れた国々では、津波襲来の事前の情報が無かったことが被害を大きくしました。プレート境界が列島の近くに位置し、地震・津波が多発する日本での津波への対応策はどうなっているのでしょうか。 前田利夫記者


図:日本周辺のプレート

 日本の周辺で地震が起きた場合、気象庁は国内の観測網で得られるデータをもとに、震源と地震の規模を推定。地震発生から三分以内を目標に津波予報を出しています。

 今回のスマトラ島沖地震のように遠隔地で発生した地震については、全地球地震観測ネットワーク(IRIS)のデータをもとに震源・規模を推定しています。今回、気象庁は地震発生から約四十五分後に、日本への津波の影響はないと発表しました。

 太平洋での津波にたいしては、二十六の国・地域が参加する太平洋津波警報組織(ITSU)があり、太平洋で大きな地震が発生した場合は、ハワイにある米国の太平洋津波警報センターが、津波に関する情報を発することになっています。今回の地震は、インド洋で起きたため、何の情報も発信されませんでした。

 もし、インド洋でも同様の体制がとられていれば、今回のような大惨事は避けられたと考えられています。

 日本での津波情報にかんしても、万全とはいえない状況があります。

 一つは、震源が非常に近い場合には、気象庁の津波予報では間に合わなくなる場合があることです。一九九三年の北海道南西沖地震では、地震発生から間もなく奥尻島が津波に襲われ大きな被害が出ました。一九八三年の秋田県沖地震でも、津波警報の発令前に津波が到達しました。

 太平洋側のプレート境界で近い将来起きると予想されている東海、東南海、南海地震では、早いところでは十分以内に津波が襲来するとみられています。津波予報が出されても、避難が完全にできるかどうか検討が求められています。

 もう一つの問題は、二万二千人余の死者を出した三陸地震津波(一八九六年)型の津波への対応です。このとき陸上で感じた揺れは、震度2か3程度だったといいます。震動による被害は記録されていません。

 このタイプの地震は「津波地震」と呼ばれ、震動は小さいのに、大きな津波が起きるのが特徴です。地震を起こす断層がゆっくりすべるために「ヌルヌル地震」ともいわれます。

 気象庁では、このタイプの地震にたいしても、津波予報を出す態勢をとっていますが、「実例を経験していないのでまだ実証はされていない」といいます。

 沖の方の海面や海底で津波を直接観測するシステムの開発も進められています。これらが実用化されれば、防災に大きな役割を果たすことが期待されています。しかし、沿岸近くの地震で発生する津波にたいしては、やはり限界があります。

 沿岸にいて地震を感じたら、津波を警戒して対応することがどうしても必要です。



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