2004年12月30日(木)「しんぶん赤旗」

サッカーくじ 直営化でも…

増える借金 最後は税金?

効果ない対策 減る売上げ


 販売不振に悩むサッカーくじ(toto=トト)が迷走しています。くじを運営する独立行政法人「日本スポーツ振興センター」はこのほど、金融機関に委託していた運営のすべてを、センター直営と決めました。経費を削減し、スポーツ関係の助成を増やすとの理由ですが、見えてきたのは経営破たんと、さらに膨らむ赤字への道です。 和泉民郎記者


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国立競技場にあるtotoの看板。アルビレックス新潟対柏レイソル戦で=11月10日

 直営決定の中で明らかになったことは、日本スポーツ振興センターが抱える借金の金額です。

 同センターがサッカーくじを始める際、販売機などの費用とした「初期投資」額は、約350億円。それを「りそな銀行」(旧大和銀行)から借り受け、毎年売り上げから約70億円ずつ、5年間で返済する計画でした。

 しかし、売り上げ低迷のため、返済が進まず、4年目の今年、約210億円の借金の存在が明らかとなりました。

「赤字の可能性 もちろんある」

 現行のシステムでは、420億円の売り上げがあれば黒字となるといいます。今回、直営化で、りそな銀行へ委託料を払わずに、「200億円の売り上げで黒字になるシステムを作る」としています。

 問題なのは、すでにその想定も下回る売り上げしかないことです。売り上げの推移を見ると、1年目の642億円を頂点に減り続け、2年目360億円、3年目198億円、4年目の今年度は、現在のところ140億円で、昨年度を下回ることは確実です。

 同センターの両角晶仁スポーツ振興推進役は「もちろん赤字になる可能性もありますよ。でも黒字の可能性もありますから」と強弁します。

 しかし、この4年間、年々売り上げが低下したもとで、それを200億円以上に戻すこと自体、至難の業です。

 今後、売り上げを伸ばすために、センターは、当たりやすいくじの創設、インターネット販売、試合当日の販売などを打ち出しています。

 その多くは、国会で議論した当時、批判が大きく、導入が見送られたものです。

なりふり構わず 年齢制限撤廃も

 センターの雨宮忠理事長は「文科省もいろんな商品開発ができる環境をつくってくれている。規制の鎧(よろい)を1枚1枚はがしていかなくちゃいけない」と、年齢制限の撤廃も視野に入れた発言もしています。

 このなりふり構わない姿勢は、それだけ経営難が深刻だという「告白」でもあります。

 しかし、新たな対策も赤字脱却の「切り札」となり得ないことは過去、コンビニエンスストア販売や競技場販売を導入したときに売り上げ増につながらなかったことをみても明らかでしょう。

 年々、赤字が膨らみ、最後は税金で穴埋めする――。サッカーくじは、こんな最悪のシナリオをひた走っているように見えます。


廃止が一番の振興策

 新日本スポーツ連盟・和食昭夫事務局長の話

 日本スポーツ振興センターは、直営の理由を「中間マージンの節約」などとしていますが、民間も「うまみがない」と判断したということでしょう。直営で、サッカーくじは同センターや文科省の直轄となるわけで、教育を担う機関が、ギャンブルを進めることは、国民との矛盾を広げるに違いありません。

 スポーツへの助成ができないくじは、続ける理由がありません。これまでもスポーツ界に幻想を振りまき、振興をゆがめてきた。日本体育協会も「自主財源をつくる」と、くじをあてにしない姿勢を打ち出しました。

 くじは一刻も早くやめる。それが一番のスポーツ振興だと思います。



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