2004年12月29日(水)「しんぶん赤旗」

独立行政法人の統廃合・非公務員化

くらし守る研究開発を切捨て


 小泉内閣が二十四日に決めた「新行革大綱」では、十六の独立行政法人を六つに統廃合するとともに、研究・教育関係の法人職員約一万二千百人のすべてを非公務員にすることが盛り込まれました。(別表参照)

表

農業系を狙い

 とりわけ狙い撃ちにされているのが、農林水産関係の法人です。

 地域農業のリーダーとなる農業青年を全国に輩出してきた農業者大学校を廃止。農業系の研究機関では三法人を統合するほか七法人の職員を非公務員化し、計五千六百人を対象とする大規模な組織再編をおこないます。

 農業系研究所は四年前の独立行政法人化で十八から六法人に統合したばかり。今度の統合で四法人になってしまいます。

 各研究所では現在、国民生活に密着した研究がおこなわれています。

 食料の自給率向上や安全供給―農業・生物系特定産業技術研究機構

 地球温暖化防止―農業環境技術研究所

 遺伝子情報や生命科学―農業生物資源研究所

 食の安全や食品加工・流通―食品総合研究所

 開発途上国の食料・環境問題の解決―国際農林水産業センター

 農業の多面的機能の維持―農業工学研究所

 ゲノム(遺伝子)情報やBSE(牛海綿状脳症)研究など世界をリードする成果をあげ、外部の専門家からなる評価委員会は毎年、最高の「A」評価を下しています。

 いずれも長期的視野で地道な活動が求められ、公的研究機関でこそ可能となる研究ばかりです。

 そのため研究者からは「統廃合で予算・組織の削減となれば、民間資金を期待できない長期的基礎的分野では影響が大きく、国民にとって重要な分野の研究が後退などに追い込まれかねない」との声があがっています。

 国立の研究所は、小泉「改革」路線のもとで真っ先に切り捨ての対象とされ、四年前に国の機関から切り離されて独立行政法人となりました。

 しかし、職場の運動や国会での論戦によって、研究を支えるため公務員の身分保障は維持されましたが、今度はそれも奪い去ろうというのです。

 対象となるのは、防災科学研究所はじめ森林総合研究所など国民生活にとって重要な役割を果たしている機関です。

“基礎”後回し

 非公務員化によって目先の利益が優先され基礎的研究が後回しになるなど、公共的な研究にとって支障やゆがみが出ることが危ぐされています。

 すでに非公務員化が決まった産業技術総合研究所では、来年実施を前に「効率化」を優先した組織再編を実施しました。

 「企業との関係が深い一部の先端分野への集中がすすみ、基礎的研究が困難な条件に置かれている」「トップダウンの組織運営が強まり下からの意見が上に上がらない。競争があおられ職員相互のコミュニケーションもとりづらくなった」などの声があがっています。

ルールに違反

 今回、見直し対象とされたのは、各法人の「中期目標」期間が二〇〇五年度末までに終了する五十三の法人です。

 独立行政法人にかんする基本法「独立行政法人通則法」では、法人の改廃については三年から五年の「中期計画」終了後に検討すると定め、外部の専門家からなる評価委員会の意見を聴くなどルールを定めていました。

 ところが小泉内閣は、その「中期計画」終了まで一年以上も残して統廃合だけを先に決めてしまいました。評価委員会の意見などまったく無視する形で六月に突然、わずか九人の民間人でつくる「有識者会議」(議長・飯田亮セコム相談役)を設置。同会議が出した統廃合などの具体策がそのまま「新行革大綱」に盛り込まれたのです。

 自ら定めたルールさえ無視して、「削減先にありき」ですすめるやり方に、国民に痛みを強いる小泉「改革」路線の本質が現れています。深山直人記者



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