2004年12月27日(月)「しんぶん赤旗」 シリーズ米軍再編基地の現場から地球規模の司令塔来る座間 「恒久化につながる」 市をあげて反対
「主要な在外米軍基地の中で最も平和な基地」と基地関係者からも指摘されるキャンプ座間(神奈川県座間市、相模原市)。丘の上に広がる敷地は緑に覆われ、静寂さに包まれていました。ここに、米陸軍の中で最も迅速な展開部隊を持つ第一軍団(米ワシントン州)司令部を移転し、米国の先制攻撃戦略の前線司令部とする計画が持ち上がっています。竹下岳記者 在日米陸軍司令部が置かれている同基地(二百三十五ヘクタール)には、四百六十戸の住宅、学校、公園、数多くの娯楽施設が並んでいます。住宅密集地とフェンスで隔てられた十八ホールのゴルフ場には、平日の昼間からプレーする米軍関係者の姿がありました。 豪華“東洋の宝石”基地当局自身が“東洋の宝石”と呼ぶ施設の大半は、日本政府の「思いやり予算」によるもの。一九七九年以来、施設整備費として約七百億円が投じられてきました。 座間・相模原両市は「市街地の中心に位置し、街づくりの障害になる」としてキャンプ座間の全面返還を要求していますが、「戦闘部隊がおらず、米軍機の爆音や米兵犯罪なども少ないため、多くの市民は基地の存在をあまり意識してこなかった」(座間市関係者)とされます。 ところが、今年相次いだ「第一軍団司令部移転」という報道は、自治体や市民に大きな衝撃を与えました。 第一軍団は、太平洋とインド洋、その周辺地域への紛争介入が任務。移転される司令部は、在日米軍司令部も兼ね、司令官は大将に格上げされて在日米四軍(陸・海・空軍、海兵隊)の統合司令部になるというものです。 狙いは、中東やアジア太平洋全域に部隊を緊急展開できる前線統合司令部の創設です。 キャンプ座間に駐留する米兵は、わずか五百七十五人(二〇〇三年九月現在)。同基地の関係者は「組織改編で毎年、減少している」と指摘します。八百人規模とされる第一軍団司令部の受け入れ能力は十分だというのです。 事務所廃止の意味同基地には現在、在日米陸軍司令部のほか、アジア太平洋全域の兵たん・後方支援を担当する「第九戦域支援コマンド」と呼ばれる司令部が置かれています。司令官は在日米陸軍司令官が兼務。米太平洋軍のスパイ部隊・第五〇〇ちょう報大隊も駐留しています。 ここにはかつて、「極東有事」に備えた米陸軍の戦闘司令部・第九軍団司令部が置かれていました。九五年九月に同軍団が解散されたのに伴い、米陸軍は第一軍団の前方連絡事務所をキャンプ座間に置きました。在日米陸軍広報部は、その目的を「すべては日米安保条約を支援するためだった」と説明します。つまり、第九軍団司令部が任務にしていた「極東有事」対応の肩代わりです。 しかし、同広報部は「その事務所は〇一年七月に廃止された」と明らかにしました。 このことは、今回の第一軍団司令部の移転計画が、これまでの「極東有事」対応とは異なる狙いを持っていることを示しています。その新たな狙いとは、地球規模で部隊を緊急投入する“戦争司令塔”の創設です。 実際、第一軍団はこの間、大きな変ぼうを遂げてきました。傘下にある二つの旅団は、中型輸送機でも空輸可能な最新鋭装甲戦闘車「ストライカー」を装備。数日内に世界各地に展開し、戦闘を直ちに開始できる「ストライカー旅団」に転換しています。イラクにはこれら旅団をはじめ、一万人規模の兵力を投入しています。 陸自と一体化狙う
自衛隊を本格的な“海外派兵隊”に変えようとしている日本政府内からも、第一軍団司令部の移転を望む声が上がっています。移転計画が、海外での日米共同作戦をにらみ、第一軍団と陸上自衛隊の一体化を図る狙いを持っているからです。 陸自元幹部も「米陸軍と陸自の間には、実戦経験や装備・通信能力で大きな格差がある。今のままでは海外で円滑に共同行動を取れない」とし、戦闘部隊との連携強化を主張します。 陸自は第一軍団との共同演習を毎年実施。九九年からは、研修などの目的で第一軍団に連絡官を派遣しています。司令部移転で文字通りの一体化を図ろうというのです。 「戦争司令部の移転反対!」「第一軍団は来るな!」 今月十二日、座間市内の公園で開かれた第一軍団移転反対の市民集会。厳しい寒さの中、参加者二千七百人の声が響き渡りました。かつてない規模のデモ行進がキャンプ座間周辺を囲み親子連れも目立ちました。 座間・相模原両市も「移転は基地恒久化につながる」と繰り返し反対を表明。市議会や自治会などとともに市をあげた取り組みを始めています。
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