2004年12月22日(水)「しんぶん赤旗」
創価大グループによる携帯電話の通話記録盗み出し事件で電気通信事業法違反に問われた、創大出身でドコモシステムズ元社員嘉村英二被告(28)の公判が二十一日、東京地裁で開かれました。同被告は同法違反で二〇〇二年十一月に有罪判決を受けたのにつづく二度目の裁判。前回裁判のさい、今回の事件も調べられたのに隠し通していたことが、この日の証言で明らかになりました。
嘉村被告には前回と同じく、創価学会副会長らが弁護人につきました。実行犯の嘉村被告や、同被告に犯行を指示した創大副学生課長らが有罪になった前回裁判で弁護人は「私的で一過性、偶発的事件」と主張、執行猶予つき判決になりました。
この日の公判で嘉村被告は、波多江真史裁判長から「前回の取り調べで今回の事件のことを聞かれなかったのか」と質問され、「警察に聞かれた」と証言。「そのさい本当のことを話したのか」との問いには「話さなかった」とのべ、犯罪を隠していたことを認めました。被告弁護団も以前から今回の事件を知っていた可能性も濃くなりました。
起訴状や検察冒頭陳述によると、同被告は〇二年三月と四月、東京・江東区にあるNTTドコモの端末を操作し、学会脱会者の福原由紀子さんとジャーナリスト乙骨正生氏の通話記録を不正に引き出しました。
検察側は論告で、憲法に保障された通信の秘密を侵害する重大かつ悪質な犯行であり、通信事業に従事していた被告の罪は重大と指摘。しかし犯行の動機については「個人的興味」という被告人供述を証拠提出するにとどまりました。
被告人弁護団は今回の裁判でも、犯罪事実はすべて認めたうえで、嘉村被告の再就職企業関係者を証人に立てて、「私が更生させる」との証言で情状酌量を要求。「単純で計画性のない一過性の事件」とするなど、前回同様の法廷戦術を展開しました。
公判は、検察側が懲役一年八月を求刑して結審。判決は今月二十八日に言い渡されます。
起訴状朗読から求刑までわずか一時間。あっという間の結審に、満員に近い傍聴席最前列にいた被害者福原由紀子さんの長女が泣き崩れました。「悔しい。何も解決していないのに」と。
創価学会を脱会後、執拗(しつよう)な嫌がらせに遭い、母娘ともども携帯電話の記録を盗まれたことを知り、恐怖にふるえた日々…。福原さんも「被告の個人的興味というけれど、私と彼には何の接点もない。どうしてあんな主張が通るのか」と言います。
法廷で「前の事件では、ほかから頼まれて通話データを渡したが…」と検事。嘉村被告に犯行を「頼んだ」創大副学生課長は、創価学会の全国副青年部長という要職にありました。
「嘉村被告に福原さんや私のことを教えたのは誰か。その組織的背景なしには解明できない事件だ」と乙骨氏。「全容解明まで、世論にも、そして法的手段にも訴えつづけていきたい」と語りました。