2004年12月18日(土)「しんぶん赤旗」
メキシコでは、フォックス政権が労働法制の改悪を狙うなか、労働者の抗議行動が広がるとともに、国際的な人権団体からも厳しい批判の声が上がっています。
(メキシコ市=菅原啓 写真も)
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フォックス大統領は、経済を発展させるカギとして、社会支出を切り詰める財政改革や電力事業の民営化を含むエネルギー改革とともに、労働法制の「改革」を提起してきました。
現在、国会で論議されている政府案は、六カ月間の試用期間で契約した労働者は補償金を払わずに解雇できるとか、残業手当支払い義務を廃止する、労働組合がストライキを行える条件を厳しくするなど、労働者の諸権利をことごとく掘り崩すものです。
メキシコでは、法律上は労働者のさまざまな権利が認められていますが、実際には、政府公認の労働組合の多くが雇用者側と協調、賃上げや労働条件の改善を主張してたたかう独立系組合が不当に差別されてきました。
米国のニューヨークに本部を置く人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチのビバンコ米州担当理事は十三日、メキシコの労働者は労組結成や、団体交渉、ストライキにあたって「一連の障害に直面してきた」が、今回の「改革」が実施されれば、「労働者の諸権利行使は事実上不可能になる」と厳しく批判しました。
一方、メキシコの財界や多国籍企業は、国際競争力強化のために労働者の保護規制をとりはらう労働市場の柔軟化が必要だと主張し、親米右派の与党、国民行動党とともに、改悪案を後押ししています。
国会では、野党勢力の制度的革命党や民主革命党が多数を占めているため、政府案がそのまま成立するのは困難です。しかし、制度的革命党に影響力を持つ国内最大の労働組合センター、労働会議(CT)のロドリゲス議長が、雇用増大策との抱き合わせを条件に政府案に賛成するなど、制度的革命党内の意見対立も報じられています。
国会での議論が本格化するなか、独立系労組を結集する全国労働者同盟(UNT)や一部の教員労組の組合員ら約三千人が、十一月中旬から国会周辺で、労働法制の改悪反対の宣伝、議員要請行動を続けています。
南部のオアハカ州からやってきた教員組合の幹部セフェミナ・カブレラさんは「いまでも生活が苦しいのに、残業規制も有給休暇制度もなくそうという改悪案は絶対に阻止したい。私たち自身のためだけでなく、子どもたちのため、メキシコの未来のためにもです」と語りました。