2004年12月12日(日)「しんぶん赤旗」
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新潟県能生(のう)町。人口一万五百人の町が、一万八千基の創価学会巨大墓地計画で揺れています。町民は環境保全などを訴えて、一カ月で有権者の六割を超す反対署名を集めて町議会に提出。議会の対応に注目しながら、運動強化に取り組んでいます。柿田睦夫記者
日本海に迫る城ケ峯。地域のシンボルとして地元中学校の校歌にもなっています。この山の裏側の傾斜約六十ヘクタールを切り開き、仮称「信越メモリアルパーク」を造るという計画です。
創価学会の巨大墓地は全国に十三カ所四十四万基(建設中含む)。どこも完成前に完売、推定収入三千億円ともされる超高収益事業です。新潟県では一九九七年、小国町で議会の同意を取りつけたものの、議会解散請求の住民投票に阻まれて断念。その後、松之山町、中里村、名立町で計画が浮上しながら、住民や町当局の協力を得られませんでした。
そのためか、能生町では“潜行戦術”ですすみました。公式に明らかになったのは、開発事前協議書を町に提出した今年九月。すでに地権者(六十七人)の九割の同意書をとり、町当局などへの根回しもできていたとされます。
この計画に町仏教会や、予定地の谷水が直接流れ込む筒石地区と同地区の保護者会、筒石漁協が反対を表明。四団体を中心に「巨大墓地造成に反対する住民の会」を結成し、∇自然や魚介類の生息環境悪化を招く∇遠足など子どもたちの自然学習の場が奪われる∇学会員専用施設であり住民のための物ではない∇既存の学会墓地をみても、町の活性化や振興につながらない―などの見解をまとめました。十一月十日に始めた請願署名は十二月七日には有権者の62%に当たる五千四百人を超しました。
「森は水を守り、魚や貝を育てる。だから各地で漁民も植林運動に参加している」と筒石漁協の塚田四一組合長。「豊かな魚や特産のワカメも、いまの環境のなかでこそ育つ」と言います。
「一度墓地にすればやり直しはできない。町民がかかわることができ、地域産業や暮らしに役立つ利用計画を考えるべきだ」と、筒石地区(五区)の長崎正典総区長。仏教会の杉田嶺仙会長は「環境とは衆生の命を生かす方策」と指摘します。
一方の学会側。計画公表後、工事担当の大成建設が、一部の関係者らを集めた非公開の説明会を開催。「一般向けの説明会は必要ない」と表明したといいます。町の外に事務局を置く計画推進の「住民団体」を結成し、それを通してもっぱら「町の活性化につながる」と宣伝しています。
日本共産党の巻渕恒雄町議は「既存の学会墓地は活性化の役に立っていない」と反論。「その実態を具体的に明らかにするとともに、より良い利用プランを住民とともに考えていきたい」と語っています。