2004年12月11日(土)「しんぶん赤旗」
|
日米両政府は十日、沖縄本島と久米島全域に及ぶ米軍嘉手納基地の航空管制業務(嘉手納ラプコン)について、二〇〇七年度末をめどに日本側に返還することで合意、緊急時の米軍機の作戦運用を妨げないことを盛り込んだ「移管計画」を正式に決めました。
これにより、那覇空港発着の管制システムは日本側に一元化されますが、航空各社の運航乗員からは「米軍の飛行情報がどれだけ入ってくるかは保障の限りではなく、民間機、軍用機混在の危険な空の状況は続く」と語っています。
嘉手納ラプコンの返還については、二〇〇〇年三月に米軍が正式に表明。同年七月下旬から具体的手続きが開始されました。沖縄の空域の航空管制は、七二年の沖縄返還時に、日本が将来に管制能力を向上させた際に移管することが条件になっていました。
在日米空軍によると、十五日から日本側の管制業務移管の訓練を始めるとしています。
日本での米軍の航空管制空域は、首都圏・関東甲信越に及ぶ横田空域と中国地方の岩国空域が、まだ返還のめどが立っていません。
沖縄周辺の米軍空域の管制権(嘉手納ラプコン=ターミナルレーダー進入管制)が日本側に移管されることが、日米両政府間で正式に決まりました。しかし、空中衝突やニアミス(航空機同士の異常接近)など安全問題よりも米軍の基地機能優先が条件となっています。
嘉手納ラプコンは、嘉手納基地から半径約九十キロとこれに接する久米島から半径五十キロの空域。沖縄本島をめぐる空域の上限高度は六千メートル、久米島は同千五百メートルです。この中に那覇空港の進入管制があります。
現在、大阪や東京方面から那覇空港に向かう民間航空機は、沖縄本島の九十キロ手前で管制が米空軍嘉手納基地の第一八航空団の管制下に入ります。嘉手納空域管制は、嘉手納や普天間両基地を離着陸する米軍機との交通整理を行って那覇空港にある国土交通省の空港進入管制(半径九キロ、高度九百メートル)に引き継がれ、空港に着陸することになります。
沖縄の空が危険なのは、狭い空域で米軍機と民間機が混在しているからです。米軍機との衝突やニアミスの危険性が他の空港に比べて非常に高くなっています。
その第一は那覇空港と嘉手納空港の滑走路進入コースが交差していることにあります。那覇空港から民間機が離陸する場合、民間機のパイロットは嘉手納基地に着陸する米軍機を避けるために、高度三百メートルの低空飛行を強いられ、精神的負担が大きくなっています。
第二に沖縄諸島を取りまく十五の軍事演習・訓練空域の存在です。軍事空域は固定空域だけでなく、「アルトラブ」(特定の高度と航路を指定する)があります。
第三には、民間機は計器飛行(IFR)、軍用機は有視界飛行(VFR)となっており、双方で交信できません。民間機はTCAS(空中衝突防止装置)を搭載していますが、軍用機は搭載しておらず、これらの違いがニアミスを生む要因になっています。
二〇〇七年度末に管制権が日本側に移管されても、管制官が米軍人から日本人になるだけでは、沖縄周辺の空の安全は確立できません。返還の条件になっている「緊急時の米軍機の運用を妨げない」という意味は、米軍の基地機能に支障を与えない、ということです。演習や訓練も軍にとっては作戦運用の一環であり、演習や訓練だからといって飛行情報を無条件に提供するわけではありません。
地元の民間航空関係者は「一定の改善は期待できても、米軍の情報は現在の半分も入ってこないのではないか。米軍基地が存在する限り、根本的解決にはなり得ない」と危惧(きぐ)しています。
米田 憲司記者