2004年12月10日(金)「しんぶん赤旗」
【メキシコ市=菅原啓】南米十二カ国の大統領らが出席する第三回南米首脳会議が八日、ペルーのクスコで開かれ、二〇〇〇年九月の第一回会議以来追求してきた南米諸国の連合体「南米共同体」の設立を正式に宣言しました。
「南米共同体」は、南米北部のアンデス共同体(ペルー、エクアドル、ベネズエラ、ボリビア、コロンビアが加盟)と同南部の南部共同市場(メルコスル=ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイが正式加盟)の九カ国に加え、チリ、ガイアナ、スリナムで構成されます。
ペルーのトレド大統領は開幕にあたって、「われわれは単一の通貨、一種類のパスポート、直接選挙によって選出される一つの議会をもつことになるだろう」との見通しを明らかにしました。ロドリゲス同国外相は、欧州連合(EU)の「例にならう」とのべ、域内貿易自由化など経済的な統合だけでなく、共通の政策をもった国家間の統合をめざす立場を強調。
南米では、ベネズエラ、ブラジル、アルゼンチンなど、米国いいなりを拒否する政権が次々誕生。貿易交渉などで強大な米国に対抗する方向として、近隣諸国との共同、南米統合をめざす努力が続けられてきました。今回の共同体発足は、こうした流れをさらに加速させるものです。
大国に対抗する南米統合の考えは、十九世紀に南米各国を独立させたシモン・ボリバルが唱えたもの。ブラジルのルラ大統領は、南米共同体を言葉だけのものに終わらせないとの決意を表明。「ボリバルの夢見た統合を数年のうちに決定的なものとして具体化する」ために、あらゆる問題を会議で討論していくことを呼びかけました。
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南部共同市場(メルコスル) 域内の関税原則撤廃と対外共通関税を定めた関税同盟で、一九九五年に発足。原加盟四カ国のほかに、チリ、ボリビア、ペルー、ベネズエラ、メキシコが準加盟しています。近年は多国籍企業の利益優先の貿易ルールを押し付ける米国に対する交渉ブロックとしての役割を果たしてきました。
アンデス共同体 一九六九年に関税協定や外資規制をもつアンデス共同市場として発足し、九六年、より深い統合を目指して発展的に改組。加盟国の経済・社会統合を通じ、調和の取れた発展や経済成長、雇用創出を目指しています。最高意思決定機関の首脳会議や加盟国国会の代表からなる議会、仲裁裁判所をもちます。