日本共産党

2004年12月7日(火)「しんぶん赤旗」

韓国 大学入試不正次つぎ

根底に学閥・成績至上主義

将来の就職や昇進を左右


 十一月に実施された韓国の大学修学能力試験(日本の大学入試センター試験に相当)で、不正が次々に明らかとなり、韓国社会に大きな衝撃を与えています。


 最初に摘発された光州市の事件では、四グループ百八十三人が連座。試験会場から解答を携帯電話の文字メッセージで送信する「選手」(成績優秀な受験生)―「中継者」(下級生など)―「観客」(受験生)と役割分担された組織的なカンニングで、受験生から科目に応じ三十万―九十万ウォン(約三万―九万円)を受けとっていました。

不正の百貨店

 携帯電話を使ったカンニングは全国で行われていたことが明らかとなり、ソウル市、忠清南道、全羅北道、全羅南道など全国三十一カ所の百三人を摘発。替え玉受験で三日までに、全国六件十三人が検挙されました。

 予備校の校長がコンピューターを使って受講生に解答を送信した事例や、母親が最大一千万ウォン(約百万円)の報酬を条件に替え玉を依頼、親子で住民登録証と願書を偽造していた事例もありました。韓国メディアからは「不正のデパート」との声も上がっています。

 彼らを不正に走らせたものは何か――。不正発覚後、安秉永(アン・ビョンヨン)副首相・教育人的資源相は記者会見で「責任を問わないわけにはいかないが、彼らは、社会にまん延する学閥主義と試験点数中心教育の犠牲者だ」(十一月二十五日)と述べました。

 韓国メディアもこぞって、韓国社会に深く根を張る学閥主義、結果至上主義を指摘します。

 文化日報四日付は「成績・学閥至上主義が支配する社会風土が引き起こした、教育の現実の暗い実態にほかならない」と告発。同日付の中央日報は「誤った社会システムが子どもたちの不正行為を助長している」との専門家の意見を紹介し、「根源的な理由は、し烈な受験競争と過程より結果だけが重視される社会の風潮にあるというのが大多数の専門家の分析」と書きました。

苦悩語る教師

 「必要なら自分も当然しただろう」(捜査対象になった受験生)、「入試でいい点数をとれば、いい大学に入れ、いい仕事につける。誘いがあれば、誘惑を振り切るのはむずかしい」(高校一年生)と韓国メディアに話す生徒ら。担任する生徒が不正に関与した教師は「『入試が人生を左右する、ちょっとだけ我慢しろ』と子どもたちをたきつけた。社会全体が入試にきゅうきゅうとしているのに、どうして人生教育ができるのか」と苦悩を語っています。

 ソウル大など少数の名門校の学閥が幅を利かす韓国では、名門校への入学が将来の就職・昇進を左右します。

 就職サイト「コリア・リクルート」が十一月、二千四百四十二人の大卒求職者を対象に行ったアンケート調査では、75・7%が「出身大学が就職の障害になっている」と答え、62・3%が「実際に出身大学のせいで、選考から落ちた」と答えました。

悲観し自殺も

 たった一回の試験で、進路も将来も事実上決まってしまう大学入試制度は、生徒にも父母、教師にも重くのしかかっています。

 今回の試験をめぐっては、受験生が「試験がよくなくて、ごめんなさい」というメッセージを残して自ら命を絶つという痛ましい事件も起こりました。一連の不正事件で露呈した韓国社会の深刻な弊害をいかに克服していくか―韓国では熱い議論が続いています。

 中村圭吾記者



もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp