2004年12月6日(月)「しんぶん赤旗」
寒くなってスキーやマラソンもいよいよシーズンイン。多くの自治体が地域の活性化に懸命ですが、今回はスポーツによる町おこしを紹介します。
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十二月、野沢温泉スキー場がいよいよオープンです。積雪はまだありませんが、準備は万端です。このスキー場は、標高差千八十五メートル、コース面積二百九十七ヘクタール、最長滑走距離十キロという日本屈指の規模をもちます。
村民の手づくりのスキー場です。村の有志が浄財をだし、家屋を抵当にいれ資金を工面しました。その中心が野沢温泉スキークラブ(現会長は河野博明氏)です。いまは村営ですが、移管された一九六三年までクラブがスキー場を運営していました。
村おこしで始まったスキー場で、オリンピック選手が十四人うまれています。村の会議などで顔を合わす人が、あっちもこっちもオリンピックやワールドカップ経験者ということもありますよ。村民がサポーターだから選手が村に戻ってきてくれるのです。
村の子どもたちはリフト代が無料ですし、いつでもスキーができるように特別の体制があります。冬の体育授業はスキークラブが受け持っています。元オリンピック選手や国内外で活躍してきた選手がコーチをしてくれるのです。
スキー場に村外の観光資本はいっさい入っていません。観光客、スキー客のみなさんが楽しんでいただいた分のお金は、そっくり村のだれかに還元されます。そして冬場はスキー場、夏場は関連の土建仕事があります。
村の若者が定住できるのもこのサイクルがあるからです。
村名のとおり、温泉の村でもあります。三十あまりの源泉があり、無料の共同浴場である十三カ所の外湯があります。外湯は村民が「湯仲間」という制度をつくり共同で管理します。
スキー場も温泉も共有財産ですからみんなで大事にしています。
一―三月の水曜日、リフト券を買うと平日一日券をプレゼントする「ニコニコ水曜日」というサービスを始めました。
温泉地は家族できていただいた方が夜でも安心してすごせます。いい観光地にみんなで育てあげてきたつもりです。
とはいえ、この村も、全国的なスキー客の激減のあおりをうけ、スキー場経営が赤字に転落しました。民営化の動きがあります。町村合併の動きもあります。それでも村民がつくりあげてきた野沢温泉村の優れた伝統を、次世代に引き継ごうと懸命に努力しているところです。
宮崎早人村議
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毎年開かれる中学生の全国駅伝大会が今年は十八、十九の両日、千葉市の昭和の森コースを会場に行われます。ここに地元の大分県久住(くじゅう)町の中学校が念願の初出場を果たしました。
十一月の県大会で男子が優勝、女子も四位と健闘し、男子の全国大会出場が決まったのです。町には陸上競技の長距離選手を育てたいとの夢がありましたから、いま町をあげて応援しています。町当局も「久住町を駅伝の町に」とわいています。
久住町は九州本土最高峰の中岳、久住山の千七百メートル級の山々をのぞむ久住高原にあります。町のホームページは「夏の冷涼な気候と起伏にとんだ高原はマラソンコースに最適。トップ選手から実業団、大学、高校の陸上部もくる」と紹介しています。
高原の一角の南登山口近くに、町の誇りである「日本一のマラソン練習コース」があります。標高八〇〇メートル、一周三キロの天然芝コースです。約五メートル幅の芝生が張られています。高低差は七十三メートルで、クロスカントリーには最適です。
このマラソン練習コースは、町内の町おこしグループのみなさんが中心になってつくった手づくりのコースです。
私も走ってみましたが、天然芝のクッションが足にやさしく、ひざにきません。ずーっと走りたくなる感触です。
芝刈りなど経費はかかるのですが、町は全国から多くの方に来て利用してもらいたいと無料開放しています。クロスカントリーや各種の大会も開かれ、にぎわいます。ここで育ったランナーが巣立ち、一般のマラソン大会にも出場するようになりました。
夏のシーズンには、実業団から中学生までが合宿に訪れ、にぎわいます。町内には温泉もあり、陸上とセットで人気です。
中学校の全国駅伝大会には保護者はもとより、町議全員で応援に行く予定です。私も、もちろん行って応援します。
阿南勝也町議
イベントやスポーツ施設、プロチーム発足も町おこしのきっかけになりますが、継続した住民のとりくみが不可欠です。茨城県鹿島市は、サッカーJリーグの鹿島アントラーズが発足し活躍。切符のもぎりや座席誘導などで市民ボランティアが協力し町おこしに一役かっています。
ホッケーコート二面がとれるスタジアム、強豪チーム、指導者がそろう岐阜県各務原市はホッケーの街をめざします。
洞爺湖に近い北海道壮瞥町は「昭和新山国際雪合戦」が冬の目玉。「雪を無邪気に投げ合う観光客の姿」をヒントに雪合戦をイベント化し、海外、道外からの参加者も多く盛況です。来年二月二十六日、二十七日開催。
スキー(場)による町おこしは、自然条件をいかす典型例です。冬期の仕事確保ができることもあって全国に広がりましたが、財政負担や地域の特色をどう出すかで頭を悩ます自治体も多くあります。
福島大学は、陸上競技で日本記録保持者が四人もいる陸上王国。そのもう一つの顔が、スポーツ・健康の分野での研究成果を地域に生かす試みです。地域への貢献を目的にした福島大学スポーツユニオンが設立され(二〇〇一年)、福島県富岡町と協定を結び、子どもの競技力向上、クラブ設立、町民の健康管理に協力するなどしています。
ユニオンは教官や学生、院生でつくる組織。大学が地域と連携するとりくみは、関係者から注目されています。