2004年12月5日(日)「しんぶん赤旗」
ドイツではいま、欧州連合(EU)拡大、あるいは国際経済悪化という状況のもとで、経営者側が労働時間の延長を求めるなどの動きが出ています。これに対して労働者側はさまざまなたたかいを繰り広げつつ、労使協議に臨み、部分的な後退を受け入れながらも、企業の社会的責任を強調して、雇用を確保させるなどしています。
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発電所から心臓ペースメーカーなどの医療器具、交通システムや携帯電話・家電と幅広く生産し、全世界で四十三万人、ドイツ国内で十六万人の労働者が働くシーメンス社。今年六月、同社ではノルトラインウェストファーレン州の二つの携帯電話工場で金属機械産業全体の規定となっている労働協定の三十五時間労働を四十時間へ延長することが、労使間の交渉を経て決まりました。
ことの発端は、同社経営者側が不採算部門のノルトラインウェストファーレン州の二つの携帯電話工場のハンガリーへの移転と同工場四千五百人の労働者のうち二千人の解雇を提案したこと。金属産業労組(IGメタル)は、同社労働者の全国的な抗議行動や警告ストを背景に、雇用確保を最優先させて交渉。両工場で二年間の雇用確保を約束させる一方で、労働時間延長を賃金調整措置なしに受け入れました。
労働時間延長は、両工場に限定して適用されるもので「年間労働千七百六十時間」という形で合意されました。週四十時間労働とされる一方で、年次有給休暇八週間が確保されます。
この合意は、金属機械産業で今年二月に妥結した新労働協定を反映したものです。同協定は、三十五時間労働の原則は変えずに、研究所や管理部門など高い技術資格を持つ労働者や職位の高い労働者についての労働時間規制の枠を緩和し、事業所の労働者数の五割まで四十時間労働が可能としています。また職場の存亡にかかわる場合には、事業所ごとの労使合意を前提に、労働時間調整ができるとしています。
シーメンスでの合意を機に、ドイツでは、自動車産業のダイムラークライスラー社などで経営者側が、労働時間延長を労働者側に要求する動きが強まっています。
ダイムラークライスラー社では、バーデン・ビュルテンベルク州の高級自動車メルセデスの二工場で週四十時間労働を経営者側が提案。労働者側は警告ストを含む闘争の態勢をとって交渉し、これまで慣習的にあった休息時間の一部は放棄しましたが、三十五時間労働を守り、二〇一二年まで八年間の雇用確保を保障させました。