2004年11月28日(日)「しんぶん赤旗」
沖縄本島から南西へ約三百キロ。狭い水道で隔てられ、隣り合う二つの島があります。伊良部(いらぶ)島と下地(しもじ)島です。透き通ったエメラルドグリーンの海、「星の砂」の砂浜…。その美しさは「女子十二楽坊」のプロモーションビデオでも使われたほど。ここに、「米軍再編」の名で米海兵隊と自衛隊を移駐する計画が浮上しています。地元伊良部町など宮古郡六市町村は二十八日、自治体・住民をあげて反対の総決起大会を開きます。 田中一郎記者
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伊良部島でラジオをつけると、耳に飛び込んできたのは中国語の番組。アジア諸国への近さを実感させられます。
下地島と伊良部島は、沖縄本島と台湾のほぼ中間に位置します。
米海兵隊は二〇〇一年以降、地元の反対を押し切り、下地島にある民間空港・下地島空港(滑走路三千メートル)へのヘリの離着陸を強行。〇〇年はゼロだったのが、〇一年二十五回、〇二年五回、〇三年七回で、〇四年はこれまでに十八回使用しています。理由は、米比合同軍事演習に参加するための燃料給油。海兵隊が南方展開するための軍事ルート・中継拠点になっています。
米軍再編で米海兵隊や自衛隊の移転が狙われているのは、この下地島空港です。
浮上しているのは、沖縄本島の米海兵隊普天間基地(宜野湾市)に代わる新基地を同じ本島の名護市辺野古沖に建設するまでの間、代替基地として暫定使用する案です。米軍と自衛隊の共同訓練場や補助飛行場にする案も報じられています。
米軍再編と連動し、防衛庁は十二月上旬にも策定する新たな「防衛計画の大綱」を検討作業中です。この中で、南西諸島の態勢強化として下地島空港に航空自衛隊の戦闘機部隊を移駐させる案や、下地島に近い宮古島に陸上自衛隊部隊を配置する案も上がっています。
米軍の海外出撃のためのハブ(中軸)拠点にし、自衛隊との一体化、「基地統合」を図る―。下地島空港は、こうした動きの焦点の一つになっています。
「世界にあるすべての機種の離着陸が可能です」。下地島空港の関係者の説明です。
民間パイロット養成のための訓練飛行場として設置された同空港の滑走路は普天間基地の滑走路より二百メートル長く、空自那覇基地のある那覇空港と同じです。
空港東側には、兵舎などの建設も可能な百ヘクタールを超える空き地も広がっています。
地元マスコミ記者は「下地島空港の軍事基地化は、技術的にいえば、全く可能。米軍にとって、渡りに船みたいなものですよ」と言います。
しかし地元は、自然と生活を壊す軍隊の移駐に、島ぐるみで反対しています。
日本の渚(なぎさ)百選の一つで、遠浅の海に大岩が転がる佐和田の浜。沖合には、ダイビングを楽しむ観光客の小船。真っ白の砂浜が続く渡口の浜―。空港は、豊かな自然に囲まれています。
下地島の女性(55)=自営業=は「百パーセント反対。この島が(八月に起きた)普天間基地の墜落事故の二の舞いになってしまう」と不安を隠しません。
空港と佐和田の浜が見渡せるホテルのオーナー・猪子立子さん(41)も「絶対反対」です。
「ここの海は一日で十色に変わる。海も空も、自然からの贈り物です。癒やしの島に軍隊がきたら、だれも観光に来なくなりますよ。島に、何かいいことがありますか」
下地島空港 民間機パイロット訓練用の飛行場。設置管理者は県で、一九七九年に開港。建設に先立つ七一年、復帰前の琉球政府と日本政府との間で「民間航空訓練及び民間航空以外の目的に使用させない」とした覚書を交わしています。空港の軍事基地化は、この約束にも反するものです。しかし、政府は十二日に閣議決定した答弁書で「パイロット訓練及び民間航空以外の利用が当然に許されないということではない」とし、軍事利用を否定していません。 |
この島(伊良部島、下地島)は、農業と漁業が中心の小さい島です。
普天間基地の若い海兵隊の連中が伊良部にくれば、米軍の事件、事故が、この島で起きるのではと住民は不安です。住民の生活権は脅かされる。漁業にも影響あるだろう。観光は大打撃です。
宜野湾でも、伊良部でも県民の痛みは同じです。苦しみを県内でたらい回しするだけではないか。
自衛隊がくるのも好ましくありません。報じられているのは、訓練だけがくるという話でなく、部隊がやってくるという計画。生半可な話ではない。こんな小さい島に軍事基地がくるだけで、弊害があるのです。