2004年11月25日(木)「しんぶん赤旗」
来年度税制「改正」議論が本格化しています。二〇〇七年度からの消費税増税にむけた準備が着々と進められるなか、消費税が中小業者の営業にどんな影響をもたらすかを見てみました。 山田英明記者
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東京都内で社長の夫とともに建築業を営む佐藤清美さん(64)=仮名=。会社は、清美さんと夫、息子、二人の従業員で切り盛りしています。
政府は、毎月発表する月例経済報告で、景気は「回復が続いている」と判断し続けています。会社の経理を担当する清美さん。「景気回復なんてとんでもない。建築業は一番最初に不況の風をうけ、回復が一番遅い業種なんです」と語ります。
労働者の雇用者所得は三年連続で落ち込み続けています。こうした状況のもと「家を建てるお客さんの見積もりが大変厳しくなってきた」というのが清美さんの実感です。
一軒の家を建てるのに、内装や瓦、サッシ、屋根ふきなど、約二十五種の業者との取引が必要な建築業。年間総売上高約一億七千万円からこうした業者への支払いや従業員の給与、社会保険料などを差し引くと、利益は、約八十万円しか残りません。
昨年は、資金繰りのために借りた借金の利息返済がかさみ赤字になりました。
「それでも取られるのが消費税なんです。昨年は年間約百五十万円も支払いました」。今年はその上、厚生年金保険料値上げによる事業者負担増が、十月からのしかかっています。
政府は、二〇〇七年度からの消費税増税を狙っています。清美さんは「消費税が10%になったら、消費者は、家にかける出費を我慢する。そのことで、仕事が減ることがこわい」と語ります。家事を切り盛りする立場としても、出費がかさみます。「消費税が上がったからといって、従業員に簡単にやめてもらうことなんてできない。彼らにも家族の生活があるわけですから。私たちは従業員とも取引業者とも、地域とも信頼関係が崩れたらやっていけないんです」
夫も「商売をやめたい」と口にするようになりました。「だからといって、商売がえなんてできません。家を建てて、お客さんの喜ぶ顔を見るのが私たちのやりがいです。それを奪い去る消費税増税や庶民負担増は許せません」(つづく)
【中小業者と消費税】大手業者は、コスト削減や仕入れ価格の抑制で、消費税を商品価格に上乗せしても、利益を確保することができます。
一方、中小業者は、厳しい価格競争のもと、消費税を価格に上乗せすることができないか、上乗せしても、その分、利益を削って価格を下げることが求められます。
消費税は売り上げがあれば納税義務が生じます。したがって、中小業者は、消費税を消費者からもらえない場合や、利益が出なかったり、赤字の場合であっても、「身銭を切って」消費税を納税しなければなりません。