2004年11月12日(金)「しんぶん赤旗」
就職活動そのものに踏み出せない「ニート」。若者たちが直面する厳しい就職・労働状況が影を落としているケースも多いのではないか。不安定雇用の労働実態に詳しい首都圏青年ユニオン委員長、名取学さんに聞きました。
「ニート」という言葉が日本に紹介されたのは最近で、定義もまだはっきりしていません。ただ、働こうにも、何らかの事情で働けなくなっている若者は、一九九〇年代後半あたりから増えてきていたと思います。私たちのユニオン(組合)が結成されたのは二〇〇〇年ですが、当初から、そういう人たちがかなりいると感じていました。
ユニオンを結成して驚いたのは、二十代後半ですでに三―四回解雇されている人が結構いたことです。みんな「自発的に辞めた」というのですが、実際には、残業代が出ないことや社会保険に入れてくれないことに抗議したら「クビ!」と言われたので、などの理由が多い。正社員と口げんかをしたらクビ、など、あまりにも簡単に不当な理由で解雇されるんです。
最初は正社員でも、だんだん派遣やバイトしか見つからなくなる。次に探すときにはそれすら大変で、だんだん無職でいる期間が長くなる。不安定雇用に投げ込まれ、失業と半失業の間を行ったり来たり。いつまでたってもスキル(技術・技能)は身につかない。そこから「ニート」になっていくのです。
半失業になった段階で、国や社会の責任で職業訓練がきちんとやられていれば、まだ救われたはずです。しかし、「すぐに辞めるのはその人が甘いから」みたいにいわれ、日本ではあくまでも“個人的な問題”として扱われてきた。公共職業訓練は、質量ともに不十分です。政治の無策が、若者の雇用問題をここまで深刻にしたと私は思っています。
政府の「若者自立・挑戦プラン」を見ると、若者に職業意欲を身につけることやベンチャー(起業)などを促すだけで、採用側の問題には手をつけていません。あれでは本当の処方せんとはいえませんね。
竹中(平蔵経済財政担当)大臣などは、「クビになっても次の仕事を見つければいい」といいます。でも、不当な解雇にあった場合、この解雇は不当なんだということをハッキリさせない限り、次のところに勤めても続かないんですよ。そこがわかっていない。働く側の努力ばかり問題にしないで、企業の責任こそ問うてほしい。
政府に本来求めたいのは、正規雇用を増やすことです。ただ、ここまで失業や不安定雇用が増えてしまった以上、それを全部吸収するだけの雇用が一気に増えるというわけにはいかないでしょう。
そこでせめて、非正規雇用の労働者の待遇改善と雇用の安定化を求めたい。いまは「パートやバイトなら簡単に切ってもいい」という風潮が強すぎます。そこに規制をかけ、正規雇用との均等待遇を実現する。最低労働条件、最低賃金を引き上げる。そうすればフリーターでもある程度安定して働けるようになり、若者をとりまく状況は、いまより格段によくなると思うのです。「ニート」を生み出す一つの要因をなくすことにつながると思います。
そういう社会をつくっていくためにも、もっと声をあげる人が増えなければ。ぜひ多くの若者に労働組合に入ろうと呼びかけたいですね。
聞き手 坂井希記者