2004年11月9日(火)「しんぶん赤旗」
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「フジチクはハンナンと二人三脚で食肉業界の同和利権を牛耳ってきた」。BSE(牛海綿状脳症)対策の国産牛肉買い上げ事業をめぐる不正で逮捕された名古屋市の大手食肉卸「フジチク」グループ会長の藤村芳治容疑者について、愛知県の食肉業者はこう評します。先に逮捕・起訴された大阪の食肉最大手「ハンナン」元会長、浅田満被告との“二人三脚”関係から浮かびあがるものは――。
今回の事件は藤村容疑者と浅田被告の密接な関係抜きには語れません。藤村容疑者らが国産と偽装した輸入牛肉約二百トンは、ハンナングループから仕入れたものでした。その肉が偽装に使われることを前提として搬入されたことは、ハンナングループ会社幹部の公判での証言で明らかになっています。
両者は、牛肉偽装をめぐる動きのなかでも同一歩調をとりました。浅田被告の供述によると、同被告の偽装用牛肉の買い集めの謀議の場にも藤村容疑者が参加していました。
二つの事件を結びつける病根は、食肉業界の同和利権です。今回の偽装事件の舞台となった愛知県同和食肉事業協同組合(愛同食)は、藤村容疑者が代表理事を務めています。愛同食は、一九七六年三月に「解同」(部落解放同盟)愛知県連合会の関連組織として設立されました。
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「解同」は部落問題を利用して利権あさりをしている団体。藤村容疑者は、古くから「解同」愛知県連企業対策部長を務めていました。
愛同食の上部団体である全国同和食肉事業協同組合連合会(全同食)では、藤村容疑者が副会長、浅田被告が専務理事をつとめています。
藤村容疑者や浅田被告らは同和系食肉団体の要職を牛耳り、その力で食肉業界で横暴をふるってきました。ハンナン牛肉偽装事件でも、藤村容疑者は、浅田被告と共に農水省畜産部長(当時)らに、全同食が買い上げ事業の窓口団体になれるように働きかけ、認めさせました。
浅田被告の供述によると、農水省担当者は、同事業にかかわる情報を公式発表より前にたびたび伝えてきたといいます。それは、同和利権を背景にした勢力がいかに農水省と癒着し、影響力を発揮してきたかを物語っています。
愛同食は、買い上げ事業に千二百四十六トンを申請し、助成金約二十三億八千万円を国から受け取っています。この額は、ハンナングループに次ぐものです。愛同食の組合員は「フジチク」と関連企業が大半を占め、問題となった助成金の98%が同社グループが申請しました。
今回の摘発で藤村容疑者や浅田被告がぐるになった食肉同和利権の実態にどこまで迫れるのか。さらに農水省や農水族議員との癒着を解明できるのか。捜査当局だけでなく政治の舞台でも追及すべき課題は山積しています。
森近茂樹記者