2004年11月9日(火)「しんぶん赤旗」
収穫の秋に襲来した台風23号は、兵庫県下各地で農作物に甚大な被害をもたらしました。被災から半月以上たったいまなお、生活の糧を奪われ苦悩が続く淡路と豊岡の農家に話を聞きました。
兵庫県・塩見ちひろ記者
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台風23号による県の農林水産被害は、施設被害も含め約三百四十七億円(十月二十八日、県集計)にのぼり、とりわけ淡路(約百八十三億円)、但馬(約九十一億円)地域の被害は深刻です。肥沃(ひよく)な平野が広がる淡路島・三原郡は、国内有数のレタスの産地。台風の直撃を受けて平野を流れる川がはんらんし、田畑を泥が覆いました。
同郡西淡町松帆地区の農家の男性(76)は、「畑も苗も全部つかった。もうなんもあれへん」と肩を落とします。七十アールの畑でサニーレタスとタマネギを作っていますが、近くを流れる三原川の堤防が決壊し、辺り一面泥の海に。納屋も浸水し、トラクターやコンバインなどの農機具がすべてダメになりました。
「当面の収入は、月三万三千円の年金だけ。これからどないしたらええんや…。何とか支援金を出してもらえんやろか」と訴えます。
同地区で泥まみれのレタスを廃棄していた永楽泰昭さん(67)は、「出荷の三日前でした。高い肥料をやってネットも三べんかけたのに」とやりきれなさをぶつけ、息子の多則さん(40)も「年内はもう出荷できんし、植え直した分が三月ごろいっせいに出回るから、安値でたたかれるのは目に見えとる。お先真っ暗や」と不安を語ります。
豊岡市八社宮(はさみ)地区で米や野菜を作っている西沢康裕さん(45)は、円山川の決壊で三ヘクタールの田畑と自宅が水につかりました。収穫期のレタス、収穫間近のイチゴがビニールハウスごと浸水し、軽トラックやトラクターなどの農機具も含め被害総額は一千万円近くになります。
「共済には加入していないので、たて直すめどが立ちません。人生の半分以上百姓をしてきたから、ここで続けていきたい。ぜひ、救済制度を」と切実に訴えます。
被災した農家にたいする兵庫県の支援制度は、融資が中心で、直接の助成制度はありません。七月の豪雨で被災した福井県福井市は、土砂流入などの被害を受けた水田十アールあたり約二万二千円を農家に助成しており、浸水被害を受けた農機具の修繕費用として最高五十万円を補助しています。また、埼玉県は、自然災害で損失を受けた農家にたいし、農薬や肥料購入費を助成しています。
日本共産党は、県議団や関係市町議員を先頭に、被災農家から実態を聞き、直ちに行政へ対策を申し入れてきました。
県農林水産常任委員の新町美千代県議は、「現行の制度では被災農家は救われません。国に抜本的な支援策を求めるとともに、直接助成や無利子の融資など県の独自支援を求めていきたい」と語っています。