2004年11月5日(金)「しんぶん赤旗」
石原東京都政は、この五年間、都立施設を廃止し、民間移譲、区市町村への移管をすすめてきました。その結果、百を超える都立施設がなくなりました。老人ホーム、都立病院、保健所、都立高校、青年の家、看護専門学校、児童養護施設、高齢者就労センター、商工指導所など、どれも都民の福祉、くらしに欠かせないものです。これを推進してきた自民、公明、民主など「オール与党」の責任は重大です。東京都・長沢宏幸記者
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都立母子保健院もその一つです。小児と産科の専門病院として、一年三百六十五日、二十四時間対応でき、地元の世田谷区をはじめ、地域に欠かせない役割を果たしてきました。
都は二〇〇一年、都立病院を半数に削減する統廃合計画にもとづき、清瀬・八王子小児病院、梅ケ丘病院の統合とともに同院の廃止を打ち出したものの、母子保健院の存続を求める住民運動が大きく広がり、十万人を超える署名が寄せられました。ところが、自民、公明、民主の賛成で〇二年十二月に廃止が強行されました。
その結果、同区内の夜間救急医療は、国立成育医療センターの一カ所になり、一、二時間待たされることも少なくありません。
深夜、子どもが熱を出し、タクシーで同センターに駆けつけた経験がある若林美香さん(32)は「一時間ほど待たされてしまい、子どもの体調が悪化するのではないかと気が気ではありませんでした。母子保健院があったらなと、つくづく思いました」と話します。
また、同センターは母子保健院にはなかった乳幼児医療費助成の対象外となる特定療養費(紹介状を持たない患者の初診料加算)四千二百円を、今年四月から救急患者(救急車での搬送を除く)にも導入したため重い負担になっています。実際、自己負担があることを窓口で告げられた母親が、子どもの手を引いて帰ってしまう悲しい姿も見られました。
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石原都政は、都立高校も廃止の標的にしました。〇二年十月の「都立高校改革・新配置計画」では、中高一貫校など新タイプの学校を設置する一方、全日制は二百八校から百八十校、定時制は百校から五十五校への削減を発表。これまでに全日制二十二校、定時制十校の廃校を強行しました。
その結果、都立高校の配置に地域的なアンバランスが生まれ、とくに定時制は大きな影響を受けました。夜間定時制高校には、いまでも一万人が通学していますが、その半数以上が仕事を持っています。定時制高校の廃止によって通学時間が長くなり、通いきれなくなるなどの問題が生まれています。
墨田、江東、江戸川地区に計十校ある定時制高校は、これまで定員に満たなかったのが軒並み受験生が増え、定員オーバーで二次募集や三次募集で不合格になり、中には通学を断念した受験生も出ています。
このため、国連の子どもの権利委員会は、日本政府に対し、都に夜間定時制高校の閉校を再検討するよう求める異例の勧告を出しています。
都立定時制高校を守る会連絡会の森光男さん(47)は「働きながら学ぶ生徒にとって職場の近くの定時制がなくなることは、学ぶ場が奪われるということ。全日制に行けなかった生徒の最後の受け皿にもなっている。ぜひ、計画を見直してほしい」と話しています。
今年度末で全日制四校がさらに廃校になり、来年度は全日制十三校、定時制十四校を新たに募集停止します。
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労政事務所は、労使関係や労働実態の情報収集、職場の苦情の処理、あっせん、労働教育、労働相談など、労働組合の育成と労働者の権利を守るうえで大きな役割を果たしてきました。
石原都政は、この五年間に三鷹、立川、新宿の労政事務所を廃止、今年四月には労政事務所制度をやめ、六カ所の「労働情報相談センター」に再編しました。
都産業労働局の担当職員は、「新宿労政事務所が廃止された影響で、前年同期に比べ相談件数は落ち込んでおり、他のセンターで吸収できていない」といいます。東京労働相談センター(東京地評)の前澤檀所長は、「都の労働行政が逆行している現れだ」と語っています。
石原都政は、都立保健所の統廃合を推進。多摩地域に十二あった都立保健所を、今年度七カ所に削減しました。(八王子、町田の両保健所は今後、市に移管する方針)
保健所は、難病患者や障害者への支援、乳幼児虐待への対応や食品の安全確保、結核、エイズ、SARSなどの感染症対策など、地域住民の安全・安心を支える重要な役割を担ってきました。
東京都精神障害者家族会連合会の野村忠良副会長は「保健所がなくなった地域では、遠くて相談に行きにくくなり、以前のように職員の訪問もなくなりました。地域によっては、都からも市町村からも以前のようなサービスが受けられなくなっています」と不安を語りました。
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都立施設の廃止は、石原都政が打ち出した都民施策切り捨ての「財政再建推進プラン」と「都庁改革アクションプラン」にもとづき推進しているものです。
自民、公明、民主などは二つのプランに賛成し、石原都政と一体になって都立施設の廃止に手を貸してきました。
日本共産党は、都民運動とも結んで、このプランの具体化を許さないために議会内外で奮闘。都立施設の廃止に反対するとともに、老人医療センターを豊島病院に統合する計画を断念させました。
また八王子、清瀬、梅ケ丘の三小児病院の統合計画を二年間延期させるなど、都の計画に一部歯止めをかけています。